創業メンバーの3人で、箱根の温泉旅館に行って合宿してきました。はじめての箱根。
日曜日の朝、待ち合わせをして、10時くらいには都内を出発しました。途中、お昼ごはんを買ったりしながら、楽しみだねーなんてお話したりしながら、箱根を目指し、正午には会場に到着しました。持ち物は、各自の作業マシンと、プロジェクタ、モバイル Wi-Fi ルータ、たくさんの紙、ペン、セロハンテープ、ポストイット、カメラ、1泊分のお着替え、くらいのものでした。身軽でいいですね。
会場に着いて「おー、立派なところだねー!あの値段でこんなところに泊まれるのかー、すごいすごい!」なんてはしゃいでいたら、実は会場を間違えていて、そこからさらに山奥に進んだところにある建物が、本当の会場でした。今回の会場、すごくよいところだったのですが、最初に間違えて入っていったところが立派すぎて、無駄にそこと比べてしまったので、会場着のときの3人の無口っぷりがすごかったです。思い出すと笑えてきます。
チェックイン
宿泊先のお部屋に着いて、荷物を降ろし、最初にやったことは「合宿へのチェックイン」です。こうして3人が集まって、ほぼ丸1日ほど一緒に過ごすという機会は初になります。それぞれに、この合宿では「こんなことを話したい」「こんなことをしたい」「こんな時間を過ごしたい」を話し、共有し、合宿の時間割をつくっていきました。
また、途中で「他のメンバーに聞きたいこともあるよね」というお話になり、それも順番に挙げ、なんだか「いい感じ」の時間割ができあがったのです。
「着地」
9月の中旬くらいから、少しずつ今のお仕事へのコミットを始めていたので、一緒に創業するメンバーのこと、少しは分かっています。ぼくたち3人は、ちょいとお話を始めると盛り上がりすぎてすぐに頭がフワフワになり、風に吹かれてどこか遠くへ飛んでいってしまいそうになるので、今回のテーマは「着地」としました。
遠い未来の姿を夢見て目がキラキラとしてくる少年の心は大事にしつつも、そればっかりになってしまっては、年内を生き抜くこともできずに死んでしまうでしょう。ぼくと同じ意識を、他の2人も持っていました。
ぼくにとっての「着地」とは、アプリケーションの開発を開始できるくらいに事業の土台を踏み固めること、でした。この日まで、どうして自分は元気に開発をスタートできていなかったのか、心情と向き合いながら「事業として、ここはどうしていこうね」と会話を重ね、自分がこれから構築すべきアプリケーションの輪郭を明らかにし、合宿終了後の週明けから、勢いよく開発を始められるようにと、そこをゴールとして見据えていました。
そこまでいかないと、10月からの自分の (本業という意味での) お仕事がありませんからねー。
地に足をつける具体的な工夫としては、ポモドーロタイマーを導入することにしました。25分ごとに「勢いに乗って浮かれていないか」を確認できます。
これまでのお話
創業者さまのお話を中心に、これまでのお話をしました。
「一緒のチームでお仕事をしよう」とか「この事業の実績はこんな感じです」なんて概要レベルでお話するときは、ほとんどの場合は「成功事例」の紹介に終始しがちだと思います。自然なことだと思います。ぼくら3人でお互いにお話してきたことも、よくもわるくも「成功」のお話が多かったでしょう。
この日、この合宿では「過去にこんな失敗をしてしまってね」という内容がいくつも話されました。加えて、失敗のお話は必ず「そこから何を学んだか」で締められていて、穏やかな気分で聞くことができました。「合宿っぽいなあ」と感じて、ひとつずつゆっくりと聞いていました。
よく整理された「失敗からの知見」は、聞いていて納得できるものばかりで、じゃあ、これから、ぼくたちはこうしていくべきだね、こうしなきゃあいけないね、こうしてみたいね、と、前向きな会話が生まれました。同じ失敗はしたくない。失敗体験もがっちり共有して、これからの戦いに備えましょう。
これからのお話
壁に貼って掲げたテーマ「着地」の2文字を見ながら、「これから1ヶ月半」と「これから3ヶ月」に期間を絞って、これからのお話をしました。
明確にしていった内容は「ぼくらのお仕事のパートナーとなるのは誰か」「パートナーは何種類いるのか」「その人たちのそれぞれにどんな価値を提供するのか」「その人たちとどんな関係を築くのか」「ぼくらがやらないことはなにか」あたりです。こうして文章として書いてみて、自分は Business Model Generation に大きく影響を受けているんじゃないかなーと感じたわけですが、メンバー全員がこの本を読んでいるし、こういったお話をせずに「価値」を見つけることはできないはずなので、恐らく自然な会話をしただけだったのだと思います。
今回、特に難しかったのは「ぼくらのお仕事のパートナーとなるのは誰か」です。自分以外の2人は、合宿にくる前に、このトピックについて少しお話する時間があったらしく、まずは「この間、ちょっと話もしたんだけどね、そうそう、たとえば誰々さんみたいな人をハッピーにしたくて、」というお話をじっくりと聞くところからはじまりました。
ところが、そうして語られる人物像を想像はできたものの、じゃあ「その人が使いたくなるアプリケーションってなんだろう」と考えると、途端にイメージが膨らまなくなるのでした。「このままじゃ設計できないなあ」と思い、ひとつずつ質問を投げかけながら、気持ちを整理していきました。そうして会話を続けていくと、やがて「これじゃあ、だめだ」というところに辿り着きました。最初に掲げていた人物像を相手にするだけでは「事業として成立しない」というイメージを全員が持ってしまったのです。
そこからは、自分たちが自然だと思える「人々の在り方」を考えなおし、再度のイメージづくりを行いました。自分たちがパートナーにしたいと思える人物像がクリアになるほどに「じゃあ、アプリケーションはこうつくればいいね」も明確になっていきます。ソフトウェアの設計を通じて、自分たちの事業のカタチが明らかになっていく過程は、とても刺激的で、なおかつ安心感のあるものでした。そうか、刺激と安心は同時に存在させられるのだなあ。
ここで、自分にとって、すごく嬉しいことが起こりました。自分が「アプリケーションの設計」という観点から「ここは、もっと明確にしなきゃいけない」「事業のスタンスとして、はっきりしなきゃいけない」という意識でお話を進めていったときに、メンバーから「うんうん、だったら、提案資料も更新しなきゃだねー。メモメモ…」という発言が出てきました。
ほむほむ。事業の「コア」は、全員が共有する「たったひとつのもの」があって、そこから派生する「アプリケーション」だったり「提案資料」だったりは、コアの形が変わった瞬間に、すべて同時に更新されるべきですもんね。構造として正しいと思いました。3人という少人数で同じ時間を過ごすことで気が付いたことです。ごくごく自然なことだろうけれど、感覚として身体で理解できた気がしますよ。手応えがあります。
夜ごはん
おいしかったー!誰もお酒を注文しなくて、エラいと思いました。
作業タイム
ごはんのあと、お部屋に戻ると、メンバーから「そういや、メールを返さなきゃ…」「書類の提出っていつまでだったっけ…」ってね、そうそう、合宿にきて、東京の慌ただしさから離れたように感じてしまうけれども、作業は作業として存在しますよね。ここで時間を切って、各自が作業を一気に進める時間としました。頭をスッキリさせてから、以降のクリエイションに臨みたかったからです。
ここでも面白いことが起こりました。「あっ、その作業、こうやると早いですよー」みたいな、ペアプロのときに偶発的に発生するような「お互いのスキルと知識の共有」がなされました。ぼくがちゃちゃっとスクリプトを書いて、メンバーの手作業を撲滅したり、逆に、ぼくが苦手な Excel の使い方を教えてもらって、作業があっという間に片付いたりました。
合宿すごい。メンバーが集まって「作業モード」を時間で揃えることによって、それぞれの作業が劇的に効率化したりするかもね、ってお話をしました。ぼくらのチームのように、それぞれのスキルセットやバックグラウンドが大きく異なるチームでは、この傾向は顕著かもしれません。メンバー間の差異を武器にできれば、もっともっと日々を加速できるかもしれません。
お絵描きタイム
はい!作業モードに突入して、左脳さんが活性化したので、合わせて、右脳さんにも元気になっていただきましょう。みんなで絵を描きました。
ごはんの前までにお話していたことを思い出しながら、それを1枚の絵にして仕上げていきます。ぼくが描いた橙色のラフに、他のメンバーが青い線を加えてくれました。前半で実のある会話をできたからでしょうね、スラスラとペンが走ってくれて、とても楽しい時間が流れます。
さて。ここまで到達したところで!自分の中のプログラマが「俺たちも… そろそろつくろっか?」と繰り返し何度も語りかけてくるようになりました。悶々としてくるわけです。楽しい題材が目の前に広がっていて、これをカタチにしていくことが自分のお仕事だなんて、とってもハッピーじゃないですか。この状況で「だーめ♡」だなんて、涎が垂れてしまいますよ。
しかし、相手は尻軽事業ではありませんでした。焦らし上手なメンバーたちから「もうちょっと丁寧に進めたい」と提言があり、それなら、ということで、ペーパープロトタイピングの時間を取りました。
メンバーたちにブレーキを踏んでもらえて、本当によかったなあ。鼻息の荒くなった自分が、ひとりよがりの開発をせずに済みました。こうして、メンバーそれぞれの頭の中にある「ぼくが考える最強の!」を描き出し、それらを共有し、さらに深い会話を続けることができました。そして出来上がったユーザインターフェイスのプロトタイプが、今、ぼくの手元にあるわけです。
温泉タイム
露天風呂ー!とってもよかった。温泉は素晴らしい。また行きたい。湯船につかりながら「これだけスピードが出るのなら、合宿はどんどんやりたいね」ってみんなでお話しました。
チェックアウト
この日のふりかえり。みんなで、今日1日のことを思い返して、お話して、確かなものにしました。
ライブコーディング
お酒を飲んで談笑しながら Rails をアプリをつくって動かして見せました。「じゃあ、次はここをこんなふうに変えてみましょう」って言いながら酔っ払いながら動かして、開発はこんなノリで進めますよ、という雰囲気を共有したかったのでした。
こうして非プログラマの人たちとやりとりしていて分かったのは、プログラマが過ごす時間について、恐ろしいくらいに何も知られていないってことです。プログラマがどのような思考の過程をたどり、どこでつまづき、そこで何を考え、どのようにアプリケーションを組み上げていくのか、そもそも見せてもらう機会がないとのことでした。
だったら、自分は、そんな時間も一緒に過ごしたいです。ひとつでも多くの機能を「会話」の中からつくっていきたい。
まとめ
このあとも箱根の秋の夜は長く、密な時間を過ごしていくことになりましたが、続きはぼくから聞き出してくださいね。
ちょっとした夢であった「合宿」が現実のものになって、とても嬉しかったです。ひとまず、これから1ヶ月半の間に取り組むべき「一人称」の課題も見つかったので、これから迷いなく踏み出していけそうです。ぼくたち3人のフォーメーションも見つかってきて、段々と連携も取れるようになってきました。スキルセットやバックグラウンドは違えど、事業を創るという「ものづくり」のプロセスに関して言えば、それぞれが学んできたことを持ち寄って、自分たちの今の現場に応用していけそうです。立場の違う人たちでチームを組んで走り出す、という、自分にとっての新しい挑戦は、理想的な形でスタートを切れたように感じています。ソフトウェアという実装で「カタチをつくる」という部分については、ある程度は「ひとりで任されなきゃ」と覚悟を決めるつもりでいたのですが、想像していたよりもずっとずっと、メンバーが「一緒につくる」姿勢でいてくれていて、不安はほとんどなくなりました。
ようやく、自分の新しい日々が動き出していきそうです。楽しみ!