#june29jp

Kosen Advent Calendar 2011、編集後記

2011-12-29

これは Kosen Advent Calendar 2011 の29日目のエントリです。12月29日を担当します。前回は @neo6120 さんの「高専とは何か、そしてまた私はいかにして高専に人生を狂わされるようになったか」でした!

…冗談はさておき。無事に25個のエントリが出揃った Kosen Advent Calendar 2011 の編集後記を書いてみようかな、というのが、このエントリの主旨です。いやいや、あの企画に編集作業なんてありませんでした。

題して「Kosen Advent Calendar 2011 に寄せて」です。企画者として、勝手に総括してみようかな、なんて。先に言っておくと、これは大和田純の個人の見解です。いつも通りね。

ぼくが欲しかったもの

写真は、ぼくの母校である釧路高専の情報工学科棟、3階の廊下。

情報工学科棟3F

この3年半くらいの間に、本当にたくさんの「高専の人」(現役生や卒業生はもちろん、高専に関わるすべての人) に会うことができて、その人たちひとりひとりの持っているエピソードが、とてもおもしろくて。もっともっと、高専にまつわるエピソードを聞いてみたいと思うようになりました。

去年、2010年12月に開催された kosenconf Advent Calendar : 2010 は、名前こそ「kosenconf」と冠してあるものの、様々な「高専エピソード」が綴られた、とてもおもしろい連載になったと思います。ぼくも、2010年12月7日を担当させてもらって「工業高等専門学校には研修旅行というものがあります」というエントリを書きました。「ぼくの通っていた高専には、修学旅行はなかったんだけれど、代わりに4年生のときに研修旅行ってのがあったよ」と書き始めて、そのときの、ぼくが19歳のときのエピソードを書きました。書いてみると、読んでくれた方から「うちは修学旅行だったよ」「うちは3年生のときに行ったよ」なんてコメントがあったりして、やっぱり色んな高専の色んなお話はおもしろいなぁと感じたのを覚えています。

あらためて去年の25エントリを読み返してみると、「学校の施設」「校歌」「学校の Web サイト」「実験・演習」「部活動・課外活動」「学校のチャイム」「学科」「委員会」「学生会」「文化祭」と、実に幅広い「うちの高専には、こんなものがあるんだよー」が輝いています。

25人からお話を聞けただけでこんなに楽しかったのだから、もっと他の人たちのお話も聞いてみたい。そうして、2011年も、高専をテーマにした Advent Calendar を企画しようと考えました。これは、自分がすでに卒業してしまった「高専」に対する哀愁であり、もっと言えば「学校という空間」「10代後半という時間」に対する哀愁でもあるのだと思います。失ったものに、憧れてしまっているのだと思います。

蓋をあけてみると

うん、高専カンファレンスの話題が多かった!参加してくれた皆さんも「高専生」というより「高専カンファレンス生」が多かったように思います。

これを偶然と捉えるのは乱暴で、というのも、

  • 企画者が、高専カンファレンスの中の人
  • 「こんな企画をやります」の周知を、高専カンファレンスのチャンネルで行っている

なんて要因はあって、無視できるものではないでしょう。

そんな中でも、「うちの高専には」とか「私と、高専」という論調で書かれたエントリは、あって。ぼくが読みたいと願っていたものを読むことができて、ハッピーでした。うむうむ。企画して、よかったです。こうしてみると、ぼくは「ここでしか読めないお話」に強く惹かれるようです。さて、特に強く印象に残っているエントリを、引用とともに紹介したいと思います。

うちのクラスにはTwitterをやっている人が20人くらいいるのですが、高専生とかかわろうとする人がわたしぐらいで、もったいないな~と感じることも…文系学科の高専生なんて珍しい?んだからもっと新しい世界覗いてみようよ!

あたらしいせかい-Kosen Advent Calendar – A’s Blog

ひとつめ。現役2年生の「文系学科」の @mhi_ihm さんのエントリ。前のめりなエネルギーが伝わってきて、何度も読んでしまいました。一人称の「わたし」の使い方が力強くて、エネルギッシュですね!

次に、苦労したこと。
文系は「コミュニケーション能力がある」ことが前提なんだなと入ってから気付かされました。
意見言えてナンボ、話せてナンボな世界。いくら筆記試験で成績が良くても、話せないと…な世界です。
プレゼンテーションをする機会が非常に多く、重度のあがり症な私は大変苦労しました。
そして、クラス42人中36人が女子という特殊な環境故か、
女子同士の人間関係もなかなか難しいものでした。
「男になりたい…」がtwitterの定期postになるぐらいに。

С.П.  反面教師として

ふたつめ。飛燕さんのエントリ。楽しいことだけじゃなくて、苦労したことについても書かれていて、とても勇気のあるエントリだと感じました。それから、その苦労とどう向き合っていったかも語られていて、このエントリに救われる他の現役生もいるのではないでしょうか。今回の企画が、こういった、日常の中ではなかなか言いにくいことを出せる場所になれたとしたら、とても嬉しく思います。

だから僕は、先月あたりから学内勉強会を始めました。僕が情報系しか扱うことができなかったので、情報分野に限った学内勉強会です。小さいものでしたが、友人の強力な手助けもあって、なんとか頑張って開催することができました。

高専に行こうか迷って高専に行かなかった人と高専について – 半空洞男女関係

みっつめ。高校2年生の @mactkg さんのエントリ。そもそもですね、高専生ではない彼が「参加できますか」と、この Advent Calendar の門を叩きにきてくれること自体が、とても嬉しかった!そして、そんな彼が、高専カンファレンスからなにかを持ち帰って、彼の通う学校で学内勉強会を開催するに至った、と。さらに、彼は今、高専カンファレンスの運営にも関わっていて、ちょっとしたキッカケで人生は (いい意味で) 狂っていくのだなぁと、あらためて気付かされるエントリでした。

在学中に自分を見つめ直す材料がたりませんよ。
他の道を選ぶのはとてもいいことだけどなかなか判断できないし許容されていないよね。
在学中に言われるエンジニアって何さ。
いい標本が高専カンファレンスにたくさんいるよ。
その標本を現役学生の前に晒してエンジニアという職業にリアリティを持たせて、学生の将来に向けての判断材料にしてみませんか?
現役学生に向けてもっと高専カンファレンスの財産を還元しましょう。

高専カンファレンスに来ないような人達に思う – ryopekoの日記

よっつめ。今回の参加者の中で、もっともぼくと近い視点を持っていたのは @ryopeko さんでした。一般には「りょぺこワイフの旦那さん」と言った方が伝わるかもしれません。

このエントリは、ryopeko さんの「決意表明」と、その手前にある「問題提起」として読みました。内容には、強く共感しました。引用中にもある「在学中に言われるエンジニアって何さ」には、大きく頷いてしまうほどで、自分も就職を目前に控えたときに書いた「卒業です」というエントリで、高専の入学式のときに言われた「立派なエンジニア」にまったくピンとこなかった、という旨を記しています。

ryopeko さんと (エントリを通じて) 会話していて、思ったこと。在学中のぼくらは「気付く前の人」だったんだろうなあ、ということ。今回、この企画に乗っかって「高専カンファレンスっていうのはさ!」と元気に書いてくれた現役生たちは、きっと「気付いている人」と呼べるのだろう。そんな (ぼくから見て) うらやましい彼ら彼女らの目には、多少なりとも、エンジニアと呼ばれる人たちの姿が、今の自分から続く将来の自分の姿が、リアリティとともに写るんじゃないかな。ここは少し、希望と願望も含むのだけれど、Kosen Advent Calendar 2011 に並べられた25個のエントリたちは、その気配を感じるには、充分すぎるくらいに、充分でした。そして ryopeko さんは、ひとりでも多くの「気付く前の人」を「気付いている人」に!と叫びたかったのだと捉えました。

…ええと、おまけ。いつつめ。実はこの文章は「12月25日のエントリ」が出てくる前に書き上げていて。大トリの25日に「さっきまでクリスマスデートだったから、ぜんぜん書く時間なかったわー」みたいなエントリが出てきたら「二度と出てけー!」と怒鳴っていてもおかしくない状況でしたが、マジで熱いエントリが登場したので、この節を書き足しています。

実は、割と最近まで「高専サイコーフッフー」みたいな考えを持っていたけれど、それは全然本質をわかってないな、とある時気付きました。 高専生同士だけでつるんでいては、「高専の強み」が全く意味を成さない。高専生がいないところでこそ「高専の強み」がいかんなく発揮されるわけだし、高専生がいないところで勝負してこそ「高専サイコーフッフー」って言えるんじゃないか、と考え至ったわけです。

I am Electrical machine: 高専とは何か、そしてまた私はいかにして高専に人生を狂わされるようになったか

福井高専の5年生、卒業を目前に控えた @neo6120 さんのエントリです。最初に出会ったとき、彼は3年生だったかな。当時は「大丈夫かこの子…」と思っていたものの、気付けば立派な5年生になり、今では「大丈夫かこの子……」と思うに至りました。きっと彼はぜんぜん大丈夫じゃなくて、やっぱり、在学中のぼくと比べてみると、圧倒的に「気付いている人」なんだと、エントリを最初から最後まで一気読みしてみて、思います。はい。

(こうしていくつかピックアップしてみると、北陸が熱いなあ!)

この現状を、どう捉えるか

長くなってきたので、ちょっとだけ、整理しましょう。写真は、ぼくの母校ではなく、札幌高専の閉校直前の文化祭で撮った写真です。

札幌高専 学校祭

ぼくが今回の企画をやろうと思ったのは「全国の高専や、そのまわりにあるもののエピソードを、もっと聞いてみたい」と思ったからでした。実際にやってみると「高専のエピソード」も聞けたけれど、それよりも「高専カンファレンスのお話」が多いように感じました。ぼく個人の感覚からすると「うん、高専カンファレンスのお話は、よく知っているよ」なんだけれど、それでも、多くの人が、高専カンファレンスについて、書いてくれる。ここから、加えて ryopeko さんのエントリから、感じ取るべきことは、なんだろうか。

じゃあ、現役生が元気に書いてくれている「高専カンファレンスってのがあってね!こんな人がいてね!こんなことが起こってね!」ってのは、誰に向けて書かれているのだろう。誰に向けてのメッセージなのだろう。誰の顔を思い浮かべて書かれているのだろう。

もしかしたら、それぞれの参加者の皆さんが「この人にも気付いてほしい!」と思う、身近な誰かなのかもしれませんね。自分が感じた「楽しかったこと」「おもしろかったもの」を、自分の身の回りの人たちと、もっと共有したいのかもな、と思いました。

現役生は、高専の中にいながら、高専の中にいる人たちをもっと巻き込もうとしている。ryopeko さんは、高専の外から、高専の中にいる人たちにもっと何かを伝えようとしている。つまり、挟み撃ちの形になるな。

だとすると、次のフォーメーションが、なんとなく見えてきた気がしますよ。

To Be Continued…

「Kosen Advent Calendar 2011 の29日目のエントリ」と称して「Kosen Advent Calendar 2011、編集後記」を書きます、と銘打って、Kosen Advent Calendar 2011 を通じて自分が感じたことを、勝手に書きました。25個、すべてのエントリに目を通しました。25個、楽しく読みました。企画できて、本当によかったです。ご参加いただいた皆さん、どうもありがとうございました!来年もやりたいですね!

Kosen Advent Calendar 2011 : ATND

25個のエントリが成す「全体のカタチ」は、今後の高専カンファレンスが向かうべき (とぼく個人が考える) ひとつの方針を示してくれています。宿題をひとつ、受け取った感じ。というわけで。

続きは「新春・高専カンファレンス2012 in 東京」で。産業技術高専荒川キャンパスで、ぼくと握手してステッカーをゲット!

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