わたしメッセージ
「わたしメッセージ」という考え方があります。ボクは、これを、大事な友人に誘われて参加した小さな小さな勉強会で教えてもらいました。そこには、専業主婦の方などがいて、普段、ボクが接する人たちとは少し異なる状況に身を置いている人とお話できる機会となり、ゆったりと流れる時間の中にたくさんの刺激があって、とても楽しかったです。
そのときからずっと、自分は「わたしメッセージ」を大事にしたいと思っています。
「わたしメッセージ」とは、主語を「わたし」にして気持ちを伝えよう、というものです。では、ここで「一緒にいる時間をなかなか確保できなくて、お互いが寂しい気持ちを抱えている男女」を想像してみてください。
女の子は「どうして、あなたは、あたしのことを気にかけてくれないの?」と言いました。男は「そんなことないよ、いつも気にかけているよ」と答えました。女の子は不満そうです。ふたりの主張は「気にかけていない」と「気にかけている」で完全に対立していて、相容れない関係になってしまっています。
ここで、女の子が「あたしは、今よりもっと、あなたに、気にかけてほしい」と言ったとしましょう。男は「そうか、君にとっては足りなかったんだね」と言って、これからの時間の過ごし方を、ふたりで話し合うことになりました。先ほどの場合とは違って、女の子の主張「もっと気にかけてほしい」は、男からは否定しようがないのです。男も、女の子のことが好きですから、望みがあるのなら、なるべくそれに応えたいと思っています。もっとよい状態があるのなら、そこを目指したいと思い、女の子との会話に応じることにしました。
ふたつの場合の違いは、女の子の「主語」の持ち方です。前者は「あなた」で、後者は「あたし」です。主語を「自分自身」にして、コミュニケーションを上手に進めよう、というのが「わたしメッセージ」です。こうした方が、受け手にとっては受け入れやすく、話し手の気持ちが伝わりやすいコミュニケーションになります。
たくさんの人からの、たくさんの意見の、まんなかを見つける
さて、例え話はおしまいにして。
ここで、私が直面した現実の問題の話をしよう。あれは今から36万… いや、1万4000日前だったか。まあいい。私にとっては、つい先週の出来事だが、君たちにとっては多分、明日の出来事だ。
だれかメッセージ
「あるひとつのもの」と、それを取り巻くすべてについて、みんながそれぞれに意見を言っています。
- ○○○は、こうあるべきだ。
- △△△は、こういうことを考える必要がある。
- □□□は、これを取り入れると上手くいく。
誰かが「こうあるべきだ」と言ったら、別の誰かが「こうあるべきではない」と言えてしまいます。「これを取り入れたら上手くいく」には「いいや、上手くいかない」と言えてしまいます。この状態では、会話を前に進めるのは、とても難しいのです。
わたしメッセージ
- わたしは、こうなったら嬉しい。
- わたしは、もっとこういうものを見たい。
- わたしは、こういうことに挑戦してみたい。
主語が一人称になると、ある人が「こうなったら嬉しい」と言ったときに、他の人は「それ、俺は嬉しくない」ということはできても、ある人の「こうなったら嬉しい」自体は否定することができません。これが大事なことだと思います。「俺は、もっと、別のものが嬉しいな」と、それぞれに出し合う分には、それぞれを共存させて会話を成立させることができます。
わたしたちメッセージ
メッセージを「わたしは」の形にして整理できたら、そこから「わたしたちメッセージ」を見つけていけるでしょう。
「わたしの、こうしたい」と「ぼくの、ああしたい」を対立させるのではなく、「わたしたちの、ああしたいこうしたい」で「問題」に向き合う形にするのです。そうして、ようやく、そこにいる人たちがチームになれます。
実際の現場から
先日、自分が運営に関わっているイベントの運営に対し「開催が多過ぎるから、減らした方がよい」という声が寄せられました。今後の運営の方針を決めるに当たり、ここから「わたしたち」はどうするべきかを考えたのです。
皆さんと会話を繰り返し、ボクが見つけられた(と思っている)、皆さんの「わたしメッセージ」は、たとえば次のようなものです。
- わたしは、なるべくすべての開催に参加したい。
- わたしは、ひとつひとつの開催をもっと大事にしたい。
- わたしは、余裕を持って準備されたイベントに安心して参加したい。
- わたしは、もっとたくさんの面白い発表を見たい。
- わたしは、特定の誰かに過剰な負荷をかけることなく開催を維持したい。
- わたしは、十分な準備期間を経て発表に臨みたい。
- わたしは、主催者のやりたいことに合わせた開催を支援したい。
ここまで辿り着ければ、皆さんと相談しながら、今後の「わたしたち」の方針を決めていけます。取捨選択が必要なこともあるでしょうが、ここまで整理できれば、ずいぶんと前に進みやすいものです。
- わたしたちは、ひとりひとりの主催者とひとつひとつの開催をしっかりと支援し、各開催の参加者に対しては適切に情報を伝えられるような環境を整備し、たくさんの面白い体験が溢れる開催が続いていくように、努めたい。
まとめ
最初に「わたしメッセージ」の考え方を紹介しました。さらに進んで、自分が見つけた「わたしたちメッセージ」について書きました。最後に、ボクが居合わせた現場における「わたしたちメッセージ」を見つけるまでのお話をしました。