なんかの理由で徹夜していて、さて帰るか、ってなって、あまりにも眠いのでタクシーに乗って楽をして帰ろうとした。移動中のタクシーの中でもずっと寝ていた。料金を払うときも、とにかく眠くて、お財布からお札を出すのにもたついていたら、運転手の高齢の女性が「はい、これでオッケーね」といって、ぼくのお財布からお札を何枚か取り出し、一瞬だけぼくに見せて確認を取って納めようとした。なんか変な動きだな、と感じ、きっと多めに取ろうとしているのだろうと察して、「すません、もっかい見せてもらってもいいですか」と言ったら、激しい抵抗にあい、そのまま口論になった。そうこうしている間にも、車はゆっくりと前進していて、視界の中で激昂する女性運転手の向こうに、道を歩いているおばあちゃんが見えた。あっ!と思ったときにはすでに手遅れ、前方不注意な運転手のタクシーは、おばあちゃんを軽く押し飛ばした。
「ちっくしょー!」と思ってタクシーを降り、タクシー会社と車のナンバーを確認するために一度だけタクシーの方に目をやり、そのあとすぐにおばあちゃんの元に走り、抱き起こした。幸い、ちょっと転んでイタタタタくらいで済んだ様子だった。タクシーは、走り去っていった。あいつは許さん。
おばあちゃんの自宅はすぐ近くだったらしく、ぼくらの様子を見た動物たちが駆け寄ってきた。首の長い猫が2匹だ。アルパカと猫のキメラという感じ。夢の中オリジナルの動物っぽかった。その猫パカの片方が、もう遠くなったタクシーの後ろ姿を睨みつけて「殺ス!!」みたいな暴言を吐いたと思う。台詞はうろ覚えだけれど、猫パカが言葉を発したので驚いた。なんというか、彼らが人間の言葉をしゃべれる、というよりは、ぼくが彼らの言葉を理解できているようだった。
頼もしい動物たちがいるから、おばあちゃんのことは任せても大丈夫そうだな、と思い、ぼくは再び帰路に着くことにした。先ほどしゃべった方の猫パカに「よろしく頼むね」と告げながら頭をなでようとしたら、噛まれた。ギョッとしたけれど、あんまり痛くない噛み方で、敵意は感じなかったので、そのまま噛まれながら会話を続けた。見た目は恐ろしいけれど、誠実で、頼り甲斐があって、いいやつだと思った。
そんなこんなしているうちに、色々あったその通りは賑やかになってきた。仮装行列がはじまったのだ。ぼくの眠気は、すっかりどこかにいっていた。
仮装行列の賑やかな彩りは、珍しく荒んでいたぼくの気持ちを癒していった。自分が帰路の途中にいることも忘れてその雰囲気を楽しんでいると、行列の中のある集団が話しかけてきた。猫パカたちの知り合いのようだ。「こんちわ!えっと、見ない顔だね」なんて声をかけられたので、かくかくしかじか、この猫パカたちと一緒に暮らしているおばあちゃんと、さっきここで知り合ったことなどを説明した。猫パカたちが懐いたように隣にいてくれたので、ぼくは怪しいやつだと思われずに済んだようだ。「そっかそっか、じゃあ、楽しんでいってよ!」と言った女の子は、行進する行列に戻っていった。
それからぼくは、歩いて帰ることにした。さっきタクシーの料金を払っていたことから考えると、ここは目的地のすぐ近くなはずなんだけれど、まあ、これは夢の中、コンテキストはどんどん更新されていく。ぼくは、現在地がどこなのかわかっていなかったし、家までの長い道のりを歩かなければならないと認識していた。
アイフォーンのアプリで現在地を確認し、なんとなく当たりをつけて歩き始めた。道中は、なんだか楽しかった。ほどなくして、以前に見た夢の中で迷い込んだ、山奥の公園にたどりついた。見覚えのある景色だ。幼稚園児たちが遊んでいるようだ。朝の11時くらいの情景に思える。でも、みんな体操着を着て紅白帽をかぶっていたし、今にして思えば幼稚園児じゃなくて小学生かもしれない。夢の中のぼくは、幼稚園児だ、と思っていた。
見覚えのある場所だし、大丈夫だろうと判断し、大雑把に道を選んで歩いていったら、すぐに道に迷った。以前に見た夢の中でも同じ場所で迷ったので、学習していないようだ。
歩いている途中、仮装行列に参加していた女の子と連絡を取り合っていた。いつ連絡先を交換したのだろう。夢の中は便利だ。また会おう、みたいな話をしていた。
…ここから先は、だいぶしょうもない話が続くだけ。もう書き切った感があるので、今回はここまで。