ふと思ったんだけれど、ぼくは、猫と一緒に暮らしたことがない。そんなぼくは、これから自分に大きな変化が訪れない限り、猫に特化したようなプロダクトをてがけることは、たぶん、ないだろう。
ぼくには、墓参りに行く習慣がない。ぼくには、兄も姉もいない。ぼくは、楽器を弾くことができない。ぼくは、コンビニエンスストアでバイトしたことがない。ぼくは、ヨーロッパに行ったことがない。
そういった必然と偶然の上にぼくは生きていて、ほんの少しでも列挙してみるとよくわかる、ないものはいくらでも列挙できてしまう、つまりぼくは、この世界の99%以上を知らないのだ。
果てしなく広がる未知の世界なんてものは、想像してワクワクするためのものにしておいて、今日のぼくは、自分の足元に目を向けよう。曲がりなりにも30年ほど生きてきて、経験できたことってのもあるんだ。それらとしっかり向き合わないことには、未知の場所にも進めないだろう。
猫、一緒に暮らしたことはないけれど、数日間だけ、うちに泊めたのだった。どこかで元気にしているといい。