ペパボの本社事業部のチーフテクニカルリードになりましたに書いた通り、2017年1月から社の事業部のひとつのチーフテクニカルリード(通称: CTL)を任せてもらっていて、今年はエンジニアリングマネージメントについての考えも深めていきたいと思っています。なにかを学ぶときに発表の機会を持つのは常套手段ですから、今回のイベントが GMO Yours で開催されると知った瞬間に「トークしたいです」と手を挙げました。
第2回 エンジニアリングマネージャー勉強会 - connpass
以下、トークで使った資料です。
資料だけ見てもよくわからないでしょうから、このエントリでいくらか補っておきます。
大切にしてほしい3つのこと
弊社には大切にしてほしい3つのことというものがあります。社内のみなさんは当然知っているでしょうし、噂によると採用面接のときにも「これ知っている?」と話題に挙がることが多いそうなので、これから弊社を受けようと思っている人もチェックしておくとよいでしょう。
- みんなと仲良くすること
- ファンを増やすこと
- アウトプットすること
さて、この3つを試しに読み上げてみると、どんな感想を抱くでしょうか?ぼくは「けっこうふつうだな」と、入社直前にはそんなふうに思っていました。どれも「あなたは大切にしていますか?」と聞かれたら「ええっと… はい、大切にしていると思います」と答えてしまいそうな内容に思いました。
これ実は、社のエンジニアにとっては半年ごとの「評価」にも大きく関わっている話で、この3つが評価の軸にもなるんですね。この3つそれぞれについて「あなたはこの半年間、どれくらいできていましたか?」と問われることになるので、自身の評価資料を作成するにあたって、多かれ少なかれ向き合うことになる3ヶ条です。
今でもはっきりと覚えている、ぼくが入社してから初となる期末の評価面談のこと。ぼくは「みんなと仲良くすること」の自己評価を、最高評価の「S」として面談に臨んだのでした。面談相手を担当してくれたのは @hsbt さんと @kenchan くんさんです。
さて、ここでぼくの面談の数日後のチーフエンジニアの日報の一部を見てみましょう。
面談、みんなと仲良くする、アウトプットするという部分について同じことを色んな人にひたすら繰り返し説明しているので書いておこうと思う。
みんなと仲良くするという項目で違うチームとコミュニケーションをとって開発したので評価A,Sですという人が多々いるけど、専門職であるエンジニアにとって、それは業務を遂行する上では当たり前であり「仕事をしていました」と同義なので、それらが優れた実績である、とは評価することはできない。
ではどういうことが優れているのか、というのは等級にも影響するものの、大別すればコミュニケーションをとる範囲が等級で求められているものに比べて事業部、会社を超えているなど範囲が広いであったり、コミュニケーションの創発が自らの活動によって引き起こされたものであったりする、というような場合に優れている、と評価可能と考えている。
つまり、「自らが何をした、何を実現した」ということが引き金となって、コミュニケーションを取れるようになった、コミュニケーションが高いレベルで取れるようになった、という事実を主張した上で、この何をした、ということが優れた実績なのだ、という主張が初めて可能となる。
ウエーイ、視座が低かったワイのことが書いてあるぞ〜〜〜。まさにこれと同じような話を面談のときに言ってもらえて、たしかにそうだよなぁ、ワイはちょっと捉え方が狭かったよなぁ、と痛感し、面談の直後に自己評価を下げたのでした。
この体験を経てぼくは、大切にしてほしい3つのことと出会い直すことになりました。なんとなく日々を過ごして、期の終わりにただ受動的に評価を受けとるのではなく、もっとかっこいい自分になるためには日々をどっちの方向に変えていったらいいかを、この3ヶ条とにらめっこしながら真剣に考えるようになりました。そうして、件の面談があった次の期から自身の活動範囲を拡げて「本社事業部エンジニアの会」というものを発足し、それからいくらか経って本社事業部のチーフテクニカルリードになり…。あの面談を経て考え方をスイッチできたことが、今のぼくの日々につながっていたのですねぇ。
というわけで、弊社においては「大切にしてほしい3つのこと」を各自が解釈して自分の日々に還元していくことは、とっても大事です。ただ、ぼくは自分ひとりではその道を見つけられず、より視座の高い人たちとの会話によってようやく気付くことができました。
こういった指針が明文化されているのは、とても心強いことです。この指針に従って行動していけば、社内で多くの人に喜ばれる可能性が高いわけですからね。漠然と「いいエンジニアになれ!」と言われる場合に比べて、考えるためのヒントが散りばめられているのはありがたいことだと思います。加えて、それを各自が自分の文脈に落とし込んで解釈することも大事です。指針があって、解釈がある。そうして初めて、各自が自身の行動を変え始めることができると思います。
ぼくは本社事業部のチーフテクニカルリードなので、本社事業部のエンジニアのみなさんが、各自が思い描く「もっとかっこいい明日の自分」になるために、これらの指針をヒントにしながらどんなことに取り組んでいったらいいか、いっしょに考えていきたいです。もちろん CTO やチーフエンジニアが日々の中で発しているメッセージの中にエッセンスはふんだんに含まれているわけですが、本社事業部に属している分、よりみなさんに近い立場で、隣でいっしょに考えられるような存在でありたいと思います。
最近、社の Slack に上の画像のような3つの Emoji を追加しておきました。社内の誰かが「これは、高いレベルでみんなと仲良くしているなあ!」と思ったら「み」の Emoji Reaction をつけますし、他2つについても同様です。こうして「なるほど、こういう行動・活動がかっこいいのだな!」という具体例が広く可視化されれば、エンジニア各位、ひいては社内の全員が、もっとかっこいい自分になるための道を見つけやすくなるだろうと思います。きっと、そうなるであろうことを願って、今日もぽちぽちと Emoji Reaction をつけていきます。
これは Rebuild: 174: One Thousand Custom Emojis (sotarok) でメルカリさんの Slack 文化の話を聴いて速でパクりました。
あまり明示的に「マネジメント!」という言葉を持ちながら今のポジションでお仕事しているわけではないのですが、広義にはこういったこともエンジニアリングマネージメントの範疇なのかな〜と思い、こんなお話をさせてもらいました。