ボクが研究室に配属された2005年当時,Web 上の実データを用いた研究ってのは,今ほど盛んに行われてはいなかった.だから,ブログや SNS のデータを数十万ユーザ単位で収集して解析した結果を発表すれば,それだけでも新規性が認められて注目された.
今となっては,そんな研究もそれほど珍しいものではなくなった.先日参加させていただいたソーシャルブックマーク研究会でも,ソーシャルブックマークを対象とした研究をしている人たちに会うことができたし,Google Scholar でソーシャルブックマークと検索すれば日本語だけでも数十本の論文に辿り着ける.
ボクも修士時代に,自分や研究室の仲間が収集したデータを解析してみたりした.幸い,ボクが属していた研究室の,ボクが過ごした時期には,Web の研究ってのはホットで,様々な研究が成されていたし議論の相手にも困らなかった.しかし,学会や研究会で会う人の話を聞いてみると,みんながみんなそうというわけではなく,属する研究チームの中でも1人で「Web が面白い!」と孤軍奮闘している人はたくさんいた.
Web の研究は,当然だけど,Web の登場以降に始まったものだから,比較的歴史は浅い.そこに用いられる手法が古典的なものだったとしても,対象が新しければ,得られる結果も新しいものになる.ソーシャルブックマークのデータを用いた研究の発表をするのに,ソーシャルブックマークの説明から入らなければならないのはけっこうしんどい.ソーシャルブックマーク自体の面白さや可能性を感じてもらえないことには,研究の面白さを伝えるのは難しい.願わくば,Web のダイナミクスや Web 上に見るユーザのアクティビティに理解のある人と議論したい,Web の研究をしている人なら感じるところであろう.
じゃあ,研究仲間をどうやって見つけたらいいか.Web の研究をしているんだもの,Web で見つけるってのがいいんじゃないか!
そんなことを考えて,最近,このブログでも研究関連の話題でいくつかエントリを書いた.仲間を見つける最良の方法は,自分の興味を表明することだ.現状,技術者というかプログラマの人たちは,Web を活用して良質のコミュニティを形成できている.研究者にも同じようなコミュニティがあってもいいはずだ.Web のパワーを理解しているのなら,研究室やゼミ,学会や研究会といったコミュニティのみに縛られる理由はないのではないか.
あるいは,ボクが知らないだけかもしれない.もしすでにあるのなら教えて下さい.ぜひ参加したいです.
ここで,ボクが想像している Web の研究者のコミュニティとは,次に示すような特徴を持ったものだ.
- 日々の研究活動を共有できる場がある
- チャットなどで気軽に議論できる場がある
- 共有できるデータセットがある
- オープンに活動し,成果を Web のユーザやサービスプロバイダにアピールできる
プログラマのコミュニティをイメージしてもらえると分かりやすいと思う.そんなに崇高な理想があるわけじゃなくて,「今日こんな論文を読んだんだけどさー」「誰かこういう研究やっている人知らない?」とか,そんな感じで研究の話をできる仲間がほしいってだけです!妙に堅苦しく書いちゃったなぁ.
例えば社会学の研究をしている人なんかは,SNS に見る人の行動を社会学的に調べようと思ったら,まず「クローラを作ってデータを集めなきゃいけない」ってなって,急にハードルが高くなっちゃう.本当は,データをどう料理するかで勝負するはずなのに,スタートラインに立つまでの本質的じゃないところで苦労しちゃう.そんなとき,割とプログラミングが得意な人がいて,すでにある程度集まったデータがあったら,共有してもいいんじゃないかな.そうして,社会学的に見て得られた知見と,自分が行った解析から得られた知見を比較できたら,それはすごく価値のあることだ.Web の研究をやっていると,みんなそれぞれ扱うデータセットが違うから,結果を比較する対象がなくてそれ以上議論できないってことがある.さらに,みんなが個別にクローリングを行うと,サービスプロバイダには負担をかけることになる.可能な範囲でデータを共有できれば,幸せになる人は多いのではないか.
そんな想いがあって,web-researcher.jp ドメインを取得しました.まだ何もありません!具体的に何をどうしていったらいいか考えているところです.
IRC も同じく web-researchers.jp という名前で irc.freenode.net 上にチャンネルを作ってみました.共感してくれる人がいたら,ぜひ参加してほしいです!
まずはボク自身が情報を発信するところから始めよう,そうしよう.