#june29jp

「アジャイルな見積りと計画づくり」を読みながら

2010-12-31

「アジャイルな見積りと計画づくり」を読んでいます。

4839924023 アジャイルな見積りと計画づくり ~価値あるソフトウェアを育てる概念と技法~
Mike Cohn、マイクコーン、安井 力、角谷 信太郎
毎日コミュニケーションズ 2009-01-29

by G-Tools

所属するチームの中で、プロジェクトの今後を過ごすに当たり「この本は読んでおきましょう」という話になり、自分も読んでいるところです。

なお、このエントリは書評ではありません。本書を読みながら整理されてきた自分の思考をメモしておくことを目的として書いています。本書には自分を勇気付けてくれることがいっぱい書いてあって、今日まで自分が大事にしてきたものが、なぜ大事なのか、少しずつ整理できてきました。とてもありがたい本です。

「計画」とはなにか

書名にも含まれる「計画」について。「計画」は、とても一般的な言葉であって、様々な場面で頻繁に用いられている。

しかし「計画」という言葉が指すところは、人や場合によってまちまちになっているように思う。自分が関わるプロジェクトの中で特に危険を感じるのは、ほとんど「願望」に近いニュアンスで「計画」という言葉を使って会話が進められてしまうシーンだ。

「これは○○日までには連絡しなきゃならないから、△△日までに動くものを作っておいて」

これはなんとなく計画について話しているようにも感じられるのだけれど、理想状態から逆算した結果をただ述べているだけで、現在の状態からどのように理想状態までたどりつくかを考えなければ、それは計画とは呼べない。たとえば、単純に逆算した結果が「1日に25時間作業する」だったとしたら、それを計画として掲げられるだろうか。

「1日25時間」の例だけを聞かされれば「なにを馬鹿なことを」と思うかもしれないけれど、実際の現場にも、願望の吐露にしかなっていないような「計画まがいのもの」は存在する。これを計画と呼んではいけない。計画は、実現可能なものでなければならない。ある状態に到達することが不可能だと分かった時点で取るべき行動は、元気いっぱいに「死ぬ気でがんばります!」と声を張り上げることではなく、新たに実現可能な目標を設定し、当初の目標からずれてしまう分をどのように埋めるかを考えることである。

こうした前提を置かないことには「計画」について会話を成立させることができないので、当然「計画づくり」についても話すことができない。まずは、しっかりと前提を共有する必要がある、と感じている。

本書のいたるところから感じる「良さ」の正体はなにか

本書には、読んでいて嬉しくなることがたくさん書いてある。どうして嬉しいのか。

104ページの「不確実性を減らす」のあたりまで読んで気が付いたのは、本書は、とにもかくにも「人は、プロジェクトを通じて成長する存在である」という前提に立っている、そのことだ。

人は、プロジェクトを通じて成長する。だから、自分たちが成長してもすべての見積りをやり直すことにならないように、時間ではなく規模を見積もる。人は、プロジェクトを通じて成長する。だから、プロジェクト開始時に、プロジェクト終了時までの具体的な計画を立てることはせず、自分たちの成長に合わせて計画を小まめに軌道修正していく。

つまりは「人間讃歌」ってわけだ。ボクたち作業者は、プロジェクトにとって、決められた動作を変わらずに繰り返す歯車なんかじゃない。成長を続ける存在である。そう言い聞かされている気がして、嬉しいのだと思う。

まとめ

人間讃歌

写真に写っているのは、RubyKaigi2009 のときに、かくたにさんが色紙に書いてくれた「人間讃歌」の4文字です。

「アジャイルな見積りと計画づくり」は読んでいるとテンションが上がってくる、ありがたい一冊です。訳者のひとりであるかくたにさんや、レビューアのひとりであるいがいがさんと、同じプロジェクトのメンバーとして過ごしていた日々からは、人間讃歌を歌いながらのプロジェクトの進め方を学んでいるのだと、改めて認識しました。

ちょうど最近に発売された WEB+DB PRESS Vol.60 には、かくたにさんの記事があって、本書の魅力に触れるには良い機会になっています。おすすめ。

4774144606 WEB+DB PRESS Vol.60
WEB+DB PRESS編集部
技術評論社 2010-12-22

by G-Tools

そして、「他の優先度の低い作業は後回しにしてもいいから、業務時間をどんどん使ってこの本を読みましょう」と言ってくれたチームのメンバーたちは、この本を読むことでボクが成長できるということを、プロジェクトにもっと貢献できるようになるであろうことを、信じてくれているのだなあ。年明けには、この本を題材に、チームで勉強会を開きます。しっかり読んで、ちゃんと貢献したい。

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