#june29jp

RubyKaigiという体験を経て

2011-07-24

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2011年7月18日、月曜日、海の日、祝日。だけれど自分は、この日が祝日だなんてことも月曜日だなんてことも意識することなく、最終日を迎えた RubyKaigi2011 のことだけを考えて1日を過ごしていました。

そう、RubyKaigi2011 は1週間も前に終わってしまった。最後の RubyKaigi が終わってしまった。

RubyKaigi2011 のことをこのブログに書こうと思ったのだけれど、頭の中にあるものを出そうとすればするほど、RubyKaigi2011 のことではなく、何度かの RubyKaigi と自分の関係について書きたくなってしまうので、素直にそれを書こうと思います。

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RubyKaigi 小学校の4年生

RubyKaigi2006 から RubyKaigi2011 まで続く合計6回の RubyKaigi のひとつひとつを学年だと捉えると、RubyKaigi2008 のときに入学した自分は、気付けば RubyKaigi 小学校の4年生になっていました。中学年ですね。

実行委員の中ではいつまでも下っ端だったので、気分は低学年でいたのですが、やあやあ、もう4年生でしたか。確かにね、今年はじめて当日スタッフとしてやってきた新入生の子たちを見ていると「これは、こうでね、すごいんだよ」と教えたくなってしまうシチュエーションが何度かあったので、やっぱり4年生なんだなぁと思います。

5年生のしまださん、だらさん。6年生のかくたにさん、みほさん。たくさんの先輩たちに色々を教えてもらいながら、閉校までの時間を過ごしました。

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小学校での生活

RubyKaigi2008 には、一般参加者として参加しました。当時は今よりもっと Ruby のことを分かっていなくて、全体として「楽しい」という雰囲気を感じることはできたものの、聴いていて分からない内容はいっぱいあったし、今にして思えば「頭から尻尾まで」楽しむことはできていなかったと思います。

続いて、2年生のときの RubyKaigi2009 で転機が訪れます。このメールを読んで、とてもドキドキしたのを覚えています。「ぜひ担当させてください」とお返事のメールを書いて、ぼくはスタッフの一員になりました。

RubyKaigiのレポート係を担当してくれませんか

このときからはじまった、自分の班活動をまとめてみます。

  • RubyKaigi2008 : なし
  • RubyKaigi2009 : 2人でレポート班 (技術評論社の高橋さん、池田さんのサポートあり)
  • RubyKaigi2010 : 5人でレポート班 + 2人でコミュニケーションデザイン班
  • RubyKaigi2011 : 2人でコミュニケーションデザイン班

思考の流れをおさらいします。

  • RubyKaigi2009 をレポートします!わはーい! => 「レポート班」の確立へ
  • RubyKaigi2009 では、3トラックを kei さんと2人でレポートしたけれど、どう考えても休憩時間が計算に入っていないし、そもそもトラック数に対して人数が足りていないし、どうやって走り切ったか思い出せません…
  • RubyKaigi2010 では、レポート班のメンバーも参加者としてしっかりと会議を楽しめるように、担当を交代して休憩も取れるような布陣で臨みましょう => えむさん、ゆーけーさん、すがさんを引き入れて5人体制へ
  • RubyKaigi2010 では、コミュニケーションデザインを専任でまるっと担当して、ただでさえ大変なお仕事をしている先輩たちから担当をはがしましょう => 「コミュニケーションデザイン班」の確立へ
  • RubyKaigi2010 では、レポートを書きながらコミュニケーションデザインを担当したけれど、どう考えてもリソースが足りていないし、会場設計と週刊連載をどうやって並行させていたのか思い出せません…
  • RubyKaigi2011 では、レポート班は、えむさん、ゆーけーさん、すがさんに任せて、コミュニケーションデザインに専念しましょう

KaigiFreaks レポート班

自分が、RubyKaigi に貢献できたと感じていることのひとつめ。KaigiFreaks に「レポート班」という職人集団の居場所を創り、定着させたことです。

さらに嬉しかったのは、あとからやってきた人に、その場所を任せることができたからです。自分で見つけて、自分で居座るのではなく、名前をつけて、多くの人に価値を認めさせたものを、ちゃんと手渡しで次の人につなげていけたのではないかと、自分では思っています。

ぼくは、RubyKaigi2011 のレポート班が大好きでした。新たに、おーしょうさんとほっかいを迎えて、今年も5人体制の「チーム」は、状況に合わせて陣形を組み替えていける強いチームだと思います。

あんまり言うと「脱退させられた子が偉そうに言うんじゃないよ」って怒られそうなので、このへんでおしまいにしておきますね。レポート班かっこいいー!

そのときそのときでは「速報」というつもりで書くのだけれど、3年分を眺めてみると、ここには歴史すら感じることができる。すごい。

コミュニケーションデザイン班

自分が、RubyKaigi に貢献できたと感じていることの、ふたつめ。「コミュニケーションデザイン」というお仕事に名前を付けて「コミュニケーションデザイン班」を定着させたこと、です。

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自分が「コミュニケーションデザイン」という概念に気付くことができた背景には、次の3つの要因があります。

  • (1) 高井さんが施していた「懇親会のデザイン」に魅せられていた
  • (2) 同じチームでお仕事をしていた @garden_tree さんが言う「ソフトウェアだけじゃなく、チームも、組織も、すべてを設計せよ」の意味を考えていた
  • (3) 「Ruby札幌」のイベント、それを取り巻く人々や、過去の「RubyKaigi」に触れて「人に着目することの大切さ」に意識が向いていた

RubyKaigi2009 や RubyKaigi2010 の懇親会に参加した人なら「色紙」や「会いたい人カード」と聞いて、思い出すことがあるのではないでしょうか。例年、懇親会の幹事を担当してくれている高井さんは、素晴らしいデザインを仕掛けていました。それがあるだけで、人々のアクションが加速されて、コミュニケーションが円滑になるような、驚かされてしまうデザインで、ぼくには魔法のように思えていました。なるほど、考え抜かれた工夫は、人を動かすことができるのだと学びました。

高井さんと

そんな高井さんの偉業に感心していた頃、チームでは「ソフトウェアだけでなく、すべてを設計しよう」という会話がなされていました。自分は少しずつ「設計 / デザイン」の意味を考え直すようになり、この意味の深いところに触れ、自分の武器にしたいと考えるようになりました。

そもそもとして、RubyKaigi の実行委員のコアな人には「ただ開催すればよい」と考えている人はいなくて、常に「よりよい開催にしたい」という強い意識を持った人ばかりが集まっているように感じます。誤解を恐れずに乱暴に言えば「会場を押さえて、発表者を集めて、タイムテーブルを組んで、チケットを販売する仕組みを用意して」ぐらいの作業をこなせば、おそらく「開催」自体はできるのではないかと思います。だけど、ゴールは、そこじゃない。発表者の方や、参加者の方、運営に関わるの人々が、会議を楽しんで「参加してよかった」と思えたところで、ようやく価値になるのだと思います。じゃなきゃあ「Where are you from?」の地図を会場に貼ろうなんて、言い出さないはずなんです。

ぼくが見た RubyKaigi の中の人たちは、みんな「価値」を目指していた。ぼくはその姿勢に魅せられていた。だから、皆さんが目指す価値を実際の形にしていくお仕事に実装担当者がいた方がよいと思って、そのポジションを狙いました。

「価値に向かうアイディアがあったらどんどん出してください。皆さんの “こうしたい” を聞かせてください。ある部分は、まるっと任されます」

…と、そんな心意気でコミュニケーションデザイン業に取り組んでいたのですが、これはとても難しいお仕事でした。ほとんどの場合、要件が「ふわっ」としているので、設計を固めて実装に落としながら、それをスケジュールの中に納めていく、高度な「調整」スキルが求められました。RubyKaigi2010 では、力が足りなすぎて、自己評価としては合格点に届かなかったのだなあ…。

最後に、しだらさん。準備期間、開催期間、それから、RubyKaigi について何気なく話すすべての時間において「仕事ってのはこうやってやるんだよ」という姿勢を教えてもらっていました。そんな感覚です。自分が取りこぼした分は、すべてしだらさんが拾ってくれていて、その度に自分の力不足を悔やみました。しだらさんがいなかったら、きっと自分はどの担当作業も完遂できていなくて、詰めの甘さを痛感する日々でした。そんな、自分にとっての課題を、いつも丁寧に伝えようとしてくれていて、感謝が尽きません。この日々を通じて教わったものは、必ず今後に活かすと約束します。

RubyKaigi2010をひっそりと終えて – 準二級.jp

最後のチャンスとなってしまった RubyKaigi2011 の場で「必ず今後に活かす」の約束は果たせました。去年、だらさんに教わったことをひとつずつこなしていったら、色々が上手くいくようになりました。ありがとうございます、ありがとうございます。ひとつ、IRC のチャンネル設計に際して freenode とのやりとりを巻き取ってもらったとき、だらさんは「これくらい、やらせてくださいよ」と言ってくれたので、きっと全体として悪くない進行ができていたんだろうな。はあ、よかったよかった。

おいおい… 俺の土下座もとっとけよぉ?

コミュニケーションデザインの成果 – KaigiSubscreen

去年の成果を認められて、かくたにさんから「KaigiSubscreen」と名前をもらったサブスクリーンです。発表中のメインスクリーンの両脇を彩るかっこいいアプリになったと思います!参加者間のコミュニケーションも、ちゃんと支えることができました。

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開催前日の夜に、会場入りしてセットアップをしていたらですね、大ホールの両脇には「縦に映した方がかっこいいんじゃない?」となり、おぎさんがそこらで買ってきたパーツを組み合わせてあっという間に縦置きプロジェクタが完成しました。おぎさんの DIY 男子っぷりが本当にかっこいい…!

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会場のネットワークとの相性が悪かったのか、初日は上手く動いてくれないことも多かったのですが、焦らずに対処できました。「RubyKaigi は3日間ある。まだ慌てるような時間じゃない」と教えてくれたのも、去年のだらさんです。やってみてダメだったら直せばいい、と、最初からそういった心持ちで臨めていたので、ちゃんと対応できました。

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参加者の人たちにもかわいがってもらえて、KaigiSubscreen もアプリケーションとして幸せだったと思います。つくって動かすことができて、よかった。

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コミュニケーションデザインの成果 – アンチボッチランチ作戦

──数日間に渡る大規模イベントで、参加者が最も孤独を感じやすいのは食事タイムではないだろうか。

コミュニケーションデザイン班の作戦会議で「ぼっちが懇親会でするべき97のこと」のすべてに目を通してレビューしながら、そんな仮説を立てました。

「アンチボッチランチ」とは、誰かと一緒にランチに行きたい気持ちはあるけれど、相手が見つかっていない、という人たちのグループづくりをお手伝いして、望まぬ「ボッチ飯」の撲滅を目指す企画です。だいたい4〜5人くらいのグループができたら、会場付近の飲食店情報を載せた地図をA4の紙にまとめたものを1枚だけ渡して、みんなでランチに行ってもらうというもの。地図の裏には、会話のテンプレートをたっぷりと盛りつけておきました。

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セッションが行われている間は、着席してセッションを見ていれば、みんなもセッションを見ているし、強い孤独を感じることもないだろう。問題は「自由時間」です。みんなが共有するコンテキストを失った状態で、ボッチはボッチになってしまうのだと考えました。参加者がゆっくりと食事を楽しめるように RubyKaigi2011 のランチタイムは90分と長めに設定されています。それが3日間、ある。合計270分を、望まぬボッチで過ごすのと、他の参加者の人と一緒に楽しく過ごすのとでは、大きな違いがあるだろう。

そんなことを考えて、アンチボッチランチ作戦を始動させました。ランチマップの作成は、さかきさんとおおしたさんが、ほとんど任されてくれました。ギリギリまで会場設計には載せられなかったのだけれど、想っていることを伝えたら、たなべさんとまゆこさんが素晴らしい「場」をつくってくれて、おかげで当日に作戦を決行することができました。皆さんのおかげ。

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それと、自分の予想をこえる形で、ポールとアダムが、アンチボッチランチ作戦に共感して手伝ってくれたのが、とても嬉しかった。たくさんの外国人に声をかけてくれて、誘い出してくれて。大ホールホワイエを担当していた他のスタッフの皆さんも、一緒に盛り上げてくれて、楽しかったなあ。すごく楽しかった。

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合計で70〜80人くらいを「楽しくランチしてきてくださいー!」と送り出すことができたと思います。初日に参加してくれた人が、2日目も3日目も前のめりで参加してくれたりもしたので、少なくともいくつかは、楽しいグループが生まれたんじゃないかなあ。あとね、2日目の夜に、懇親会の会場に向かう電車の中でたまたまお話した2人の参加者の方は「今日のアンチボッチランチで一緒になったんです」と言っていて、本当に嬉しかったです。

Twitter / @hamakn: 帰宅。飲み会でAnti-Bocchi Conversationシート大活躍でした。企画した方ありがとうございます。

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ここまでに書いた「班」の活動などを通して、本当にたくさんのものをもらっているので、とてもとてもひとつひとつを詳細に書いていけそうにもないのですが… せっかく、素敵な写真がいっぱい残っているので、写真の力を借りて、自分にとって大事なものをあとから見て思い出せるように、ペタペタしていきます。

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しまださんの発表。しまださんが育てて伸ばしてきた枝の途中から、自分の枝がはじまっていることを、あらためて、知る。もう一度、知る。大きな大きな木の姿を見る。森の姿を見る。自分がその一部であることを、感じる。

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「男だらけの現場をとりまとめる一輪の華!キュア・マッシュルーム!」

ZoAmichiと

少年漫画育ちのぼくなので「もうだめか…」と思ったときに「仲間が駆け付けて助けてくれる」なんてシュチュエーションには昂ってしまうわけですが、今回は、あきらめかけていた「フロアガイド作成」をぞあみちが自分から声を出して拾ってくれて、本当に昂ってしまいました。すごく助かった。こうして仲間ってのは増えていくのだなあ。

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すがさんと出会えて、今がとても楽しいです。闇のトリの発表、ちゃんと言えなかったけれど、どうもありがとうね。とても嬉しいです。Web男子 Advent Calendar の初日は、ぼくが担当するからね。

除毛RubyKaigi

「片脚だけ毛がない」ってことに何人かの外国人が大喜びしていて、みんながご利益を求めてぼくの脚を触っていく「除毛RubyKaigi」が勃発したしょうもない夜のこと。「(毛のある方を指さして) Before Rails. And (毛のない方を指さして) After Rails!」って言うだけで外国人が爆笑する。

…はあぁ、ぜんぜん書き切れやしないよ。RubyKaigi のおかげで会えた人、他にもいっぱいいる、RubyKaigi 中に話せたこと、いっぱいある。少しでも忘れないように持っていきたい。どうもありがとう。

それでも「もらったものはなに?」と聞かれて、たったひとつだけ答えるとしたら、そうだなぁ… 今の自分は「文化」と答えると思います。RubyKaigi という文化。RubyKaigi という「価値観」といってもいいかもしれません。「これが、かっこいいこと」「これは、よいもの」と信じられる何か。丸3日間ぐらい、他のことを一切考えないくらいに打ち込める何か。自分にとっての、目指すべき何か。

またね

はい!

RubyKaigi は、自分の人生を狂わせてくれる、とっても楽しいイベントでした。その最後の瞬間に、大ホールのステージの上に立っていられたことを、心から光栄に、誇らしく思います。あの瞬間の「よさ」を共有できた皆さんとは、これからも様々な場面でご一緒することになるだろうと予感してやみません。

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この黒板は、いかにも「RubyKaigi 小学校」の学校祭って雰囲気を出していますね。エントリの最初にあった黒板の写真を覚えていますか。みんなが少しずつ書き足していくと、こんなにも楽しそうなひとつの「全体」ができあがる。本当に、RubyKaigi のつくりかたと同じですね。ふふー。

それじゃあ、またどこか「楽しい場所」でお会いしましょう。またねー!

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