#june29jp

研究室における情報共有

2007-12-24

ボクが今の研究室に配属されてから,2年半以上が経った.この間に,研究室での情報共有のスタイルにも様々な変化があり,考えさせられることもあったので,ここらでちょいとまとめておこうと思う.

過去「電話とメール」

配属された頃は,面と向かって交わす会話以外の連絡手段は,ほとんどすべて電話とメールに限られていた.ミーティングの議事録,イベントの出欠管理,相談事などのやりとりは,メールによって成されていた.資産はExcelファイルで管理されていて,最初の人から順番に自分の担当分を書き込んだら次の人にメールで送る,なんてこともあった.

情報共有についてアレコレ考えるようになったのは,同期のみんなでWikiを立ててからだった.論文を書くに当たり,各自が読んだ論文のまとめや研究の進捗状況などが分散していてはよくないと気付き,Wikiを利用することになった.この試みはとても上手く機能し,おかげで参考文献のリスト作りなんかはとても効率よくこなせた.

現在「研究日誌(ブログ),Skype,twitter,ソーシャルブックマーク,Redmine,Google Calendar…」

今の情報共有・伝達のスタイルを見てみると,とにかく多様化している.ケースバイケースで「どの範囲に伝えるべきことか」「伝えたい度合いはどれくらいか」「どれくらい反応を急ぐものか」などを考慮し,手段を選択する.昔と比べて,メールをほとんど使わなくなった.

確実に伝えなきゃいけなくて,すぐに返事がほしいときは話しかける.確実に伝えなきゃいけないことで,返事はあとでもいいなってことはメールしておく.研究の進捗は各自の研究日誌に書いておいて,各自が好きなタイミングで読む.「これは誰かの役に立つかも」ってWeb上の記事を見つけたときはブックマークしておけばみんなの目に触れる.イベントの出欠管理はGoogle Calendarで済むようになったから,みんなからの返信メールで受信箱が散らかることもなくなった.「この処理はあいつが実装していそうだ」と思ったらRedmineからリポジトリを覗きにいく.「○○○が上手くいかない」そんな風にtwitterにボヤいていたら先輩や仲間からアドバイスをもらえたり.夜中になるとSkypeの研究室用オープンチャットで,遠く離れた場所にいるOBの方を交えて有意義な議論をすることもある.

総じて,ボクはステキな環境が整ってきていると思っている.

良くなったところ,悪くなったところ

まず,良くなったところ.

今まで埋もれていた物が表に出てくるようになった.ちょっとしたことで作業中の仲間に話しかけるのは気が引けるけど,とりあえずの捌け口としてSkypeやtwitterが機能している.誰にも相談せずに2時間悩み続けなきゃいけなかった問題が,10分で片付くことがある.そして問題解決までの過程が共有されることで,再び同じ問題で悩む人が現れたときに,先人たちのログが役立つ.

次に,悪くなったところ.メリットにデメリットは付きもの.

個々に求められる情報共有にかけるコストが明らかに高くなった.ここまでに登場したツールの使い方をすべて覚えるだけでも相当な労力だ.幸い,今のメンバーは割と新しいもの好きな人が多く,そうではなかったとしてもこの手のツールの扱いには長けた人たちばかりなので,新しく「何かを使ってみよう」となったときは柔軟に対応できている.しかし,研究室には毎年度,次の世代が配属されてくる.そのときに伝えなきゃいけない情報共有に関するツールの使い方,思想,スタイル,雰囲気を伝えるのは簡単なことじゃない.ゆっくりと慣れてもらうしかないね.

情報の取捨選択スキルが求められるようになった.全体的に,責任というか判断の所在が発信側から受信側にシフトしているんじゃないかな.発信側は「書く」「ボヤく」「ブックマークする」などしたとき,受信側がそれらをどう解釈するかを決める.スルー力ってこういうことなんですか.違いますか.話しかけられたり電話がかかってきたりしたときには,基本的にコミュニケーションに強制参加ですけど,誰かがブックマークしたエントリの全文を読むかどうか,そこから議論に発展させるかは受信側次第だ.余裕がないときには思い切って読み飛ばす技術が必要とされる.

ツールを用いたコミュニケーションは,リアルコミュニケーションの補助

恐らく,うちの研究室のスタイルは一般的ではないだろうと思っている.ここまでツールを使い倒そうとする姿勢の組織を他にあまり知らない.

でも誤解されないように言っておく.どれだけツールを利用しても,すべてはリアルコミュニケーションを補足する以上の意味はないということ.ツールですべてを済ませようとしているわけじゃない.ひとつのボヤキがきっかけで,ひとつのブックマークがきっかけで,ひとつのソースコードがきっかけで,実際の会話につながることをボクは期待している.そして,実際にそういったことは頻繁に起きている.嬉しい.うちの研究室に会話は絶えないよ.

これから

最近,他の組織ではどんなスタイルで情報共有しているのかすごく気になっている.ボクが今お仕事させてもらっている組織では電話とメールが主な連絡手段なので,ときどき窮屈に感じることがある.なるべくコストをかけずに,みんなにとって良い環境を構築するにはどうすればいいか,真剣に考えるべきだなぁ.そう思って,色んな組織の人に話を聞いてみたりし始めた.

あと,今の研究室のメンバーとはツールを介して卒業後もつながっていられそうで嬉しいです.新しく入ってくる人から見れば「あのjune29って人は誰なんですか」ってことになるだろうけれど,しつこく絡みにくると思うのでよろしく!もう卒業後について考えちゃう時期だよ.イヤだね.

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