#june29jp

もっとWebにデータを!

2008-06-27

「集合知か集合愚か,なんて議論があるけれど,とにかく集合を作り出すことに意味がある」

そんな風に @kei_s さんが言っていたのは,いつかのゼミのときだったな.いやいや,本当にその通りだと思うよ.

ボクの捉え方では,「今まで見えなかったものを持ち込ませる仕組み」は Web が楽しくなるために大事だと思っていて,だから,ソーシャル系のサービス,CGM とか呼ばれるサービスは大好き!もう少し具体的に言うと,

  • ブログは個人の主張を Web に引き出した.素晴らしい!
  • SNS は人と人のつながり,コミュニケーションを Web 上に表出させた.素晴らしい!
  • ソーシャルブックマークはブラウザのお気に入りか,それ以上のものを Web に集めた.いいね!
  • Flickr はみんなのフォトアルバムを Web で見られるようにした.ありがとう!
  • Twitter は個人の「はらへった」すら Web に持ち込んだ.なんてこった!
  • Tumblr は日常の「これいいねー」と共感を Web 上で実現した.ちょーすごい!
  • はてなスターは本当に小さな人々の「うんうん」で Web をキラキラさせた.ステキすぎる!

な感じかな.挙げればキリがないほどに,ここ2年くらいで,Web 上に集められたデータってのは,単純に量が増えただけじゃなく,種類も豊富になった.

データが増えてくると「整理しなきゃ!」って雰囲気に包まれるんだけど,量が爆発的に増えたりデータの質が急に変わったりすると,既存の仕組みじゃ対応できなくなる.それでも,その度に技術や Web そのものが進化して,何とかなってきたのだと思う.大量のスパムに埋もれながら点在していたホームページは Google 先生が整理してくれた.ブログが急速に普及したときにはフィードリーダやソーシャルブックマークが活躍した.そして,Twitter や Tumblr はまだまだ整理されていないってのが現状だろうけど,近い将来,何らかの仕組みで整理されて,潜在的な価値が実際の価値に変わるんじゃないかって漠然と感じているよ.

例えば dzfl::tumblr を見てみてほしいよ.こんな風に「タバコを吸っている女の人(しかも美人!)の写真」だけをこんなにたくさん見られる場所は,画像検索エンジンは教えてくれなかったんだ.データがたまり続けること,とてつもない価値を感じずにはいられない.

さてと,じゃあこれから,何をしようかって考える.きっと「整理されていないものがあるなら,俺が整理してやるぜ!」ってモチベーションな人はけっこういるよね.Web 系の研究論文のアブストラクトや序論を見ると,大体そんなことが書いてあるんだ.ボクはそうだなぁ,整理は誰かに任せるとして,さらにその先に,どんなデータが見えるようになったらもっと楽しくなるかを考えていたいよ.そんなことを考えているとき,すっごくワクワクする.みんなもっとデータを見えるようにしようよ,ライフログを残そう,見えるようにして,意外な発見と出会おう.自分自身でも気が付かなかった自分に会いに行こう.

多くの人が残念に感じているように,1日はたった24時間しかなくて,これからたくさんの魅力的な Web アプリが登場したとしても,すべてにインプットを注ぎ込むことはできない.その中で,次に Web に持ち込めるライフログはどんなものだろうか.ku さんのゼロオーバーヘッド・ブロギングの時代や,makoto_way さんのデジタルサイネージに対する違和感は示唆に富む.とても考えさせられる.2007年のWebとボクのお付き合いでも書いた通り,去年,ボクがユーザ登録したサービスは恐らく100近くになるのだろうけれど,今も継続してインプットを注ぎ続けているサービスは,10にも満たない.「ユーザの1分を奪う競争」は激化していると言わざるを得ない.

ゼロオーバーヘッドな Last.fm や Wakoopa のようなアプローチが増えるだろうか.そもそも,Time Rich or Time Poor?で語られる「時間がない人」「余している時間を楽しく使いたい人」のどちらをターゲットにするかで,戦略も大きく変わるはずだ.前者には,Google のように時間の節約を提供して,そのときの利用データ(検索クエリとか)を集める.後者には,Twitter のように楽しい時間のために,データを入力してもらう.届けたいのは,ファンクションなのか,コミュニケーションなのか.この辺りを見極めずに Web アプリを作ってしまうと,ユーザの貴重な時間をつぎ込んでもらえないんじゃないかな,厳しいね.

余談

この手の考察をするときにいつも感じるのは,「ボクの考えのベースは研究室時代のディスカッションによって培われた」ってことだな.どうやって物事を考えるか,指導教官や先輩,同期の仲間や後輩たちが教えてくれた.幸い,Web 好きな人もいっぱいいたから,途方もない話をいつでもできたし,そのときの見解が今に活きていると感じるときは本当に嬉しい.ありがとう.

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