11月21日に,Aza Raskin さんにお会いしました.
今年の8月に ITmedia さんで Ubiquityの紹介記事を書かせていただいて,その関係があったりして,Ubiquity などを担当されている Mozilla Labs の Aza Raskin さんにインタビューする機会をいただいた.以下がそのインタビューの内容を記事にしたもの.
Focus on People:Mozilla Labの至宝が語る未来のFirefox (1/2) – ITmedia エンタープライズ
ITmedia の西尾さん,前回に続き色々とありがとうございました.感謝です.
Aza さんの話は面白かったよー.MacBook にサインをもらっちゃいました.Aza さん曰く「サインを頼まれたのは初めてだよ.高校のとき,ヒマだったから作ったサインなんだ」って.日本の男子中高生の発想と大差ありませんね!親近感を覚えました.
事前に Mozilla Labs の活動を見聞きしたり,他の人たちの「Aza に会ってきた!」エントリを読んで,この業界の重鎮みたいな人をイメージしていたんだけど,Aza さんは24歳で小柄で日本語達者なナイスガイだった.
インタビュー
誰かにインタビューして,それを記事にするだなんて,もちろん初めてのことで,上手くできたかどうかは分からない.お話があってから,実際に Aza さんに会うまでの丸2日間くらい,色んなことを考えた.Aza さんの過去のプロダクトについて調べてみたり,言葉としては知っているけれど,中身をちゃんと知らないものについて調べてみたり.人に何かを伝えるための文章を書くってのは大変だ.こんなことを毎日続けている記者さんは偉大ですね.
恐らく日本での独自進化と思われるブラウジングスタイルについて話してみた
インタビューが終わってからも,雑談っぽくお話を続けていて,いい機会だったので,ボクが愛用させてもらっている拡張機能やユーザスクリプトを紹介するなどしてみた.ボクが作ったわけでもないのに偉そうにゴメンなさいって思ったよ.
まず,ここでひとつ引用を挟む.
何度も書いてる気がするけど,あれはUIの実験場だから.
LDRize の snj14 さん.「あれ」ってのは Greasemonkey を指している.これには強く共感した.実験場が実験場として機能するためには,
- とにかくたくさんの試みが生まれること
- 参加者がいっぱいいること
- フィードバックが得られること
などの要素が必要になると思う.この観点から,ユーザースクリプトってのは秀逸で,簡単に作れるし,簡単に配布できるし,簡単に試せるから,作る人も使ってみる人も爆発的に増えて,良いものは残る自然淘汰の仕組みができて,急速に進化を続けているんだと思う.確かに Firefox の拡張機能ってのはユーザスクリプトに比べてできることも多くてアドバンテージはあるんだけど,作って動かして配布するにはいくつかお作法を覚えなきゃいけないし,ものものしい確認のウィンドウを通過して Firefox を再起動しなくちゃいけないとなると,試してくれる人もグッと減る.心理的障壁が高い.実験場としては,ユーザスクリプトの方が優秀と言えるんじゃないかな.
Ubiquity もこれは意識していると思うんだ.作成したコマンドのメタデータとして著者の名前を登録できるのは,プログラマへの敬意を表してのことだ,って Aza さんは言っていたけど,これも作り手を増やす方向への力だよね.コマンドの配布・共有の場所を自前で構えたのも,Ubiquity を実験場として機能させるためだ.これまでの進化の流れを汲んでいる.
AutoPagerize を紹介させていただいた.「意識しなくていいインタフェースってのはこういうことだね」と言っていた.それともうひとつ「これは,いつ作られたの」と質問がきた.ものは見つけられなかったんだけど,Aza さんの Humanized で,同じようなものを作ったことがあるらしい.どっちが先か,ってのを少しだけ気にしていたみたい.
LDRize,Tombloo を紹介させていただいた.Ubiquity では,スクリプト内で「this」と書くと,テキストの選択範囲を取得できる.一方,LDRize や,大体のフィードリーダでは,「現在の」って状態を持っていて,その場所に対して処理が行われる.LDRize では Microformats を活用していたりで,この辺りも少し話が膨らんだ.Microformats や HTML5 の話で,URL では Web ページまでしか特定できなくて,ページ内のある箇所を指すためにはどうすればいいだろう,とか.CUI で済ませようってときに,マウスを使って部分を選択しなきゃいけないとなると,操作が中断される.Tombloo ではテキスト選択,コンテキストメニュー.ポインティングデバイスの長所をどう活かすか.キーボードではどうすればいいか.
インタビュー記事にも書いたけど,Aza さんに「好きな拡張機能はなんですか」と聞いて,最初に挙がったのが Adblock Plus で,笑ってしまった.話していてずっと感じたのは,それが便利かどうか,という軸の他に,標準機能として取り込めるかどうかを考えているんだろうなぁってこと.Aza さんにとって,Adblock がどれだけ便利だとしても,恐らく Firefox の標準機能として次期バージョンに搭載するわけにはいかないだろう.まさか Google の広告を非表示にはできないはずだ.だからこその,拡張機能なんだと思った.ボクがいくつか「こんなのもあるんですよー」と紹介する度に,Aza さんは「これをすべてのユーザに使ってもらうにはどうすればいいだろう」と,Mozilla Labs のメンバーとしての目線で考えていた.
さて,まとまらないけど,こぼれ話はこんな感じです.
謝辞
Aza さん,楽しいお話をお聞かせいただき,ありがとうございました.Mozilla Japan の担当の方々,スケジュールの調整等,ありがとうございました.通訳の方,Greasemonkey 等の固有名詞が飛び交う中,意思疎通の補助をありがとうございました.西尾さん,素晴らしい機会をありがとうございました.会社の人たち,業務時間中の社外活動を認めてくださり,ありがとうございます.「インタビューどうしよー」というボクの相談に乗っていただいた友人たち,ありがとう.