Infinity Ventures Summit 2009 Spring
大変光栄なことに弊社サイジニアも Launch Pad に枠をいただいて,ボクは Staff という扱いで参加し,代表のプレゼンのお手伝いをしていました.
結果として,2位という名誉ある結果をいただいて,どうもありがとうございました!チームのみんなに業務を押しつけて札幌にやってきた(ついでに帰省)ボクも,これで月曜日は上を向いて出社できるってもんです.
IVS 2009 Spring – a set on Flickr
雑感
21日,22日と会場にいて,セッションの内容や出会った皆さんとお話させてもらった中で感じたことを,ざっくりまとめておきたいと思います.
よく耳にした言葉たちを抽象化して抜き出したキーワード
- モバイル
- ソーシャルゲーム
- 遊び
- アバター
- 実体験
総じて,一昔前に Web を語るときとは文脈が大きく変化しているなぁと感じました.少し前までは「とにかく便利」「群衆の叡智」「みんなで使えば賢くなる」「溢れる情報を整理する」といった,今と比べてやや固くて真面目な(?)方面で価値が語られていましたが,上記のキーワードから連想されるのは,「楽しい」「嬉しい」という豊かな体験に対してお金を払うユーザの姿です.そして実際に大きな市場がそこにある,という話でした.
ボクの感覚とのギャップ
「楽しい」「嬉しい」に価値を見出すのは,ボクの感覚とも一致するところです.過去にも何度かそんなエントリを書いています.
一方で,ボクが夢中になって使っているいくつかの Web アプリケーションの名前は,この会場では聞くことができなくて,この差はどこからくるんだろうってずっと考えていました.
ユーザ体験までを考えるプロダクトデザイン
Launch Pad で印象に残っているのは,Cerevo の和蓮和尚さんによる「送る送る詐欺撲滅」の話と,サイバーエージェントさんのアメーバピグの話です.
どちらにも共通して感じたのは「極めて具体的なユーザ像・ユースケースに基づいたプロダクトデザイン」が背景にある,ってことです.そこが面白かったです.Cerevo カメラの話は Web 上にもたくさんあるのでここでは割愛させてもらって,アメーバピグについてもう少し掘り下げます.
アメーバピグの設計思想は「ライトユーザー絶対主義」とのことでした.「インターフェイスは可愛らしく分かりやすく」「低スペックの PC でもストレスなく楽しめるような実装を」この辺りはブレがなくて,話を聞いていて気持ちよかったです.
アメーバピグにはすでに35万人ほどのユーザがいるそうで,みんなライトユーザにも関わらず驚異的なアクティブ率.ほぼノープロモーションなのにユーザはどんどん増えて,中には芸能人ユーザがいたり,今やユーザが自発的に独自の遊び方を見つけて楽しんでくれているのだそうです.
画面を見せてもらいながら話を聞いて,そこにあるユーザ体験は Twitter とよく似ているなぁ,と強く思いました.ちょっとヒマなときにアクセスして,特定の誰かを求めないコミュニケーションを楽しむ.そのコミュニケーションは第三者に対して開かれていて,思わぬところで話が盛り上がって大きな流れになったりする.ときにはシステムの制約を逆に利用した遊びがユーザの間から生まれたりする.有名人のアカウントにみんなで群がってみたり.まったくもってよく似ています.
人が,人とのコミュニケーションに求める「楽しさ」や「嬉しさ」って,本質は同じだってことなのでしょうね.多分,アメーバピグにどっぷりなユーザさんは Twitter を使わないだろうし,Twitter 大好きなボクはなかなかアメーバピグを使おうとは思わないけれど,これはサービスの優劣の話じゃなくて,ただの棲み分けだと捉えています.「みんな」がひとつの場所に集まってひとつのスキーマで全員が満足できるなんてことはないでしょう.自然な棲み分けが起こるのは,システムが健全な証です.
大事なのは「具体的に誰が,いつ,どんなシチュエーションで,どのようにそれを使って,何が価値になるのか」をとことん考えることなのだと思いました.機能だけ箇条書きにすればまったく同じ説明になる2つのプロダクトがあったとしても,対象ユーザが明確に違えば,それぞれは別なプロダクトとしてどちらも存在し得るのでしょう.
「必要な」システム
最後に,IVS の話から少し外れるかもしれませんが,書きます.
会場で「最近,面白いサービスはありますか」なんて話になったときに,ボクは「brightkite.com です!今日も iPhone からここの場所を写真付きでバシバシとポストしていますよ!」とやや熱っぽく答えました.brightkite は「位置情報付き Twitter」とでも言いましょうか,そんなサービスです.ボクのポストは以下からご覧いただけます.
Jun OHWADA (june29) – brightkite.com
よくある brightkite に対する反応は「位置情報をポストするのは怖い」「何が楽しいんだ」「誰がそんなものを喜んで使うんだ」といったところで,大枠ではボクも同じことを思います.例えば「brightkite はあなたの人生に必要ですか」と聞かれたら「いいえ」と答えるしかないでしょう.過去のエントリでも似たような話をしています.
「twitterは必要か」は「恋人は必要か」という議論に似ている – 準二級.jp
そんなときに必ず聞き返したくなるのは,じゃあ人生に必要なものってどれだけあって,あなたがお金を払っている対象はすべて必要なものなんですか,ってことです.難しいですね.
今回の旅の移動中に代表とこんな話をしていたら,「携帯電話もね,登場した当初は,誰がそんなものを使うんだって言われていた」って話が出て,それがたった10年や15年前の話なんだなぁと思ってしみじみしました.
だから,「誰もそんなものは使わない」と感じてしまう前に,一度でいいから「仮に多くの人がこれを使うようになったら,人の行動にどんな変化がもたらされて,どういった文化が生まれ,そのときに何が求められるだろうか」って考えるようにしています.他の人より先に未来の価値に気付けるとなんだか優越感に浸れるから,ボクは新しいサービスに飛び付いてとりあえず使ってみるのは好きですよ.まわりにはボクよりずっとずっと想像力が豊かで,アンテナの感度が良好な人たちがいるので,彼ら彼女らと未来について話すのはとても有意義です.
そして,IVS の会場にいらしていた,例えばモバイル業界のキープレイヤーの方々は,いち早くモバイルが普及した世界のことを思い描いて,その世界に先回りして行動を起こしてきた人たちなんでしょうね.
まとめ
参加報告というより雑感がメインになりました.IVS で得た刺激から思考が膨らんでこんな文章になりました.ボクが普段参加しているイベントとは雰囲気も大きく異なっていて,得るものが多かったです.だけど,この場においても「ジョジョが好きなんですね!」と話しかけられる自分のプロパティはほめてあげたいです.
弊社をお招きいただいたインフィニティ・ベンチャーズの皆さま,素晴らしい機会をありがとうございました!会場でお会いしたすべての皆さん,本当に楽しいお話をありがとうございました!シェラトンホテルさん,美味しいお料理をありがとうございました!
代表,お疲れさまでした.