「Yes, And」と呼ばれる考え方があります。コミュニケーションにおける「カタ」と言ってもいいかもしれません。デザイン思考を実践していく上で欠かせないとされるマインドです。ためしに「デザイン思考 yes and」あたりでウェブ検索してみると、たくさんの解説記事が見つかるでしょう。その中でも読みやすかったものをひとつ挙げておきます。
日本になくて、シリコンバレーにある「Yes And」のマインド
日本には存在しない、ってこともないと思いますけど。
先日、2018 年 4 月入社の後輩社員たちがふりかえりをする場があって、ぼくも場をいい感じにする担当として同席させてもらったんですね。彼ら彼女らのお話の中に「最初は、同期のみんなとチームを組んでなにかに取り組むのがすごく大変だったけれど、ひとりひとりが “Yes, And” の考えを体現できるようになってから一気にチームがいい感じになって、チームでの作業がすごく楽になった」という旨のものがありました。研修の前半で Yes, And の重要性を説いた人はいいお仕事をしているな〜と思いました。
「Yes, And」じゃないコミュニケーションはなにかというと「No, But」や「Yes, But」が挙げられます。それぞれ例を見てみましょうか。
- [発端] ◯◯っていう企画をやってみるとどうかな?
- [No, But 型] いや、それはお金もかかるしあんまりいい企画じゃないと思うよ
- [Yes, But 型] おもしろそうだね!でも、予算の確保がむつかしいから実現は無理でしょうね
- [Yes, And 型] おもしろそうだね!それを予算をあまりかけずに実現できる方法が見つかったら最高だね
うまい例を考えるのはむつかしいですね…!読んでくれている人に伝わるといいなあ。
「No, But」はいわゆる「否定から入る」ってやつで、頭ごなしに案を退けるカタです。ぼくが見てきた現場では「No, But」型を繰り出す人はほとんどいなかったように思いますね。わかりやすく角が立ちますし、意識的にも無意識的にでも避けている人が多い印象です。
「Yes, But」は「No, But」のときのような殺伐とした雰囲気を避けるためにいったん肯定している姿勢を見せて、そのあとにしっかり否定するカタです。これはけっこういろんな場所で目にしたり耳にしたりするパターンです。
「Yes, And」は否定を使うことなく相手にボールを返すカタですね。ある観点においては、こういうやり方がいいぞ〜とオススメされているカタになります。会話を止めずに命題を次々に変えて発想を連鎖させていく感じになります。
特にプロダクトに関するアイディア出しの場や、そういった明示的な場ではなくても日頃の何気ない雑談の中で発言においても、ひとりひとりがどのカタを選ぶかによってチームのエネルギーの総量はけっこう変わってくることでしょう。
お仕事や趣味で創造性を発揮したいシーンにて、モチベーションというのは有限の貴重な資源であると思い知らされます。乗り物でいえば燃料ですね。遠くに行くには燃料が必要で、燃料は無限に存在するわけではないので大事に使わなければなりません。また、より少ない燃料でたくさん移動するために燃費というものを気にします。
モチベーションを消耗させるのは簡単です。ネガティブな言葉を投げ付ければよいだけです。あなたがチームでなにかに取り組んでいるとき、あなたの言動でチームのモチベーションを消耗させてしまうとしたら、それは取り組みの価値を下げる行為と言って差し支えないでしょう。みんながみんなネガティブな言葉を撒き散らしていたら、チーム全員でチームの価値を下げるということです。全員で損を勝ち取っちゃいますね。
似たような話で、こういうツイートも見かけました。
機嫌が悪い人とか素直じゃない人、めんどくさい人って経済的に言えば「コストがかかる」んですよねー。いちいち気を遣うし、ご機嫌伺いが必要。コストがかかるから、それ以上のメリットや能力がないと誰も関わりたいと思わない。「上機嫌はすなわち上質なのだ」と今日取材したシスターも仰ってました。
— 竹村俊助/編集者 (@tshun423) July 19, 2018
「機嫌のいい職場」は生産性が高い。上司部下問わずコミュニケーションがなされてモノゴトがどんどん進むから。「不機嫌な職場」は生産性が低い。眉間にシワ寄せた上司には話しかけづらいし、ピリピリした他部署とは話したくない。コミュニケーションは当然遅くなるのでモノゴトは遅々として進まない。
— 竹村俊助/編集者 (@tshun423) July 19, 2018
「機嫌」と言ってしまうと日によって変化してしまう性質のような気がしますが、機嫌がどうであれ「Yes, And」のリアクションを保てるよう、スキルとして体得していきたいと思います。「No, But」「Yes, But」のリアクションを出すたびに見えないコストが発生している…と考えてみると、営利企業に身を置いている身としてはピリッとくるものがあります。
ぼくはチーム全員で得をしたいので、後輩社員たちから見て恥ずかしくない先輩社員であるためにも、あらためて「Yes, And」を実践していきたいと心から思いました。他の同僚たちともいっしょに実践していきたいと思い、こうしてパブリックな場所に書いてお気持ちを表明しています。正直、ぼくはまだまだ高いレベルで実践できているとは言い難いのが現状です。ぼくがみなさんのモチベーションをドブに捨てるような言動を繰り出していたら「Yes, And」と声をかけてください。