#june29jp

書籍「イスラエルがすごい」を読みました

2019-01-30

イスラエルがすごい―マネーを呼ぶイノベーション大国― - Amazon.co.jp

サイバーセキュリティについて調べていると、ちょくちょくイスラエルの名前を見かけます。「イスラエルって、なんかすごいんだなあ」くらいに捉えていたのですが、どれくらいすごいんだろう、とか、なんでそんなすごいんだろう、とか、もっと具体的に知りたくなったので読んでみました。

ぼくが「イスラエルについて知りたい!勉強するぞ!」と明確に思ったのは 2018 年 12 月で、とりあえず Amazon.co.jp で「イスラエル」と検索したらこちらの書籍が出てきて、発売が 2018 年 11 月だと知って「最新情報じゃん」と思って渡りに船を感じたのでした。

以下、自分用の読書メモです。

どれくらいすごいの?

21 世紀に最も重要な資源は、石油や天然ガスではなく、「知識」と「独創性」だ。多くの日本人は感じていないかもしれないが、世界中で知的資源の争奪戦が始まっている。今年建国から 70 周年を迎えたイスラエルは、知恵を武器として成長する国の代表選手である。

代表選手とまで言われちゃうくらいなんですねぇ。

サイバー・セキュリティは、イスラエルが最も得意とする分野の一つだ。企業をコンピューター・ウイルスなどから守る防壁、つまり「ファイアーウォール」の技術がイスラエルで生まれたことをご存じだろうか。

ファイアーウォールの件、知りませんでした。やっぱりサイバーセキュリティは得意なんですね。これはイメージ通りです。

たとえば、2014年にテルアビブで創業したイリュースィブ・ネットワークスは、チーム8が生んだ4社のベンチャー企業の1つ。同社のテクノロジーがユニークな点は、ハッカーやマルウェアが企業などのITシステムに侵入した場合、直ちにブロックするのではなく、本物そっくりの架空のIT空間に誘い込むことだ。侵入者は、本物のITシステムから「隔離」されたことを気づかずにデータを盗もうとする。イリュースィブ・ネットワークスのエンジニアたちは、その間に侵入者をリアルタイムで分析し、マルウェアなどを送り込んだ人物や組織を、逆探知によって特定しようと試みるのだ。サイバー・セキュリティの専門家の間では、侵入者の「身元」を割り出すために、しばらく泳がせるのが常識となっているので、イリュースィブ・ネットワークスの技術は重宝されているはずだ。

これは便利。すごい。

イスラエル国防軍との緊密な連携を最大限に活用して、ベンチャー企業を世に送り出すチーム8のビジネスモデルは、世界中の大手企業から注目されている。チーム8への投資家の中には、グーグルの元会長エリック・シュミットのベンチャー投資ファンドであるイノベーション・エンデバーズ、米国のベンチャー投資企業ベセマー・ベンチャー・パートナーズ、マイクロソフト、米国の通信企業AT&T、米国のIT企業シスコ、シンガポールの投資会社テマセク、日本の三井物産など、錚々たるファンドや企業が名前を連ねている。

わかりやすく凄みを感じますな。

なんでそんなすごいの?

イスラエルのハイテク企業の創設者の中には、イスラエル国防軍(IDF)で兵役に就いている時に学んだ技能を、民間経済のために利用している人が極めて多い。軍隊がベンチャー起業家の「養成校」になっているというのは、日本やドイツの産業界には全く見られない特性だ。

なるほど、兵役〜!だとしたら定常的に人が育つ仕組みになり得るなあ。

8200部隊のユニークな点は、数々の起業家を生むインキュベーター(孵化器)となっていることだ。米誌「フォーブス」は、8200部隊の出身者が創業したベンチャー企業が約1000社にのぼると推定している。

イスラエル国軍の電子諜報を担当する「8200 部隊」かっこいい。

周囲に敵国が多いイスラエルは、国民皆兵の国である。原則として 18 歳以上の全ての男女に兵役義務がある。男性は3年間、女性は2年間にわたり兵役に就かなくてはならない。

かなしい事情ではあるけれど、納得感はありますな。

他のイスラエルの起業家の間にも、8200部隊の卒業生が多い。ウェブサイト制作用プラットフォームに関するベンチャー企業ウィックスを2006年に創設したアヴィシャイ・アブラハミも、元8200部隊員。敵国のITシステムに侵入して機微なデータを入手する任務を担っていた。

Wix.com もイスラエル発だったのか〜。

軍隊という特殊な環境で知り合い、長期間にわたって苦楽を共にした戦友たちの間には、独特の友情が生まれる。この結びつきは、除隊して社会に戻ってからも維持される。彼らは、お互いの性格や得意、不得意も熟知しているので、起業の際に不可欠な、緊密なチームワークにも長けている。新たな人材やノウハウが必要な時には、軍で築き上げたネットワークが役に立つ。サイバー攻撃に関する技術的な知識だけではなく、人脈などのソフト・ファクターも、8200部隊の卒業生たちが民間経済での起業に成功する理由の1つだ。

「人が育つ」ってだけじゃなくて、「人脈が育つ」という面もあるわけですね。それは強いだろうなあ、と想像しました。

8200部隊に配属された 18 ~ 20 歳前後の若い兵士たちは、上官から極めて難しい課題を与えられる。たとえば、ある若い兵士は「X国のサーバーに入り込んで、データを取って来い」という命令を与えられた。興味深いのは、この時に兵士たちが「自分の頭で考え、知恵を絞る」という姿勢を徹底的に叩き込まれることだ。

よさそう。

こうした姿勢は、英語で「アウト・オブ・ボックス」つまり「箱の外」の発想法と呼ばれる。教授によると、8200部隊に入る上で最も重要な条件は、この発想ができるかどうかである。シュフタン氏は、「8200部隊に入れる若者は、ITの天才だけではない。軍は、若者が従来の常識にとらわれない発想ができるかどうかを、最も重視する。つまり、通常人には見えないような、現象や相関関係を見ることができる人々だ。この要件を満たさないと、8200部隊には入れない」と語る。

発想力みたいな要素を重視するんですね。これもおもしろいなあ。

たとえば戦闘機のパイロットが、ある目標を攻撃するよう命令されたとする。パイロットが目標に近づいて、「この攻撃を実施するのは間違っている」という結論に達した場合、攻撃命令を実行する必要はない。そのかわり、基地に帰投してから、なぜ爆撃しなかったかをきちんと説明しなくてはならない。つまり兵士たちは「上官から与えられた命令だから」という理由で盲目的に服従してはならず、常に自分の頭で判断することを求められる。なぜかというと、上官も誤った判断をしている可能性があるからだ。「すべてのことを疑い、質問せよ」というイスラエル人の大原則がここに生きている。

上意下達の雰囲気が強い軍隊においてもコレなんだから、真に国全体で共有されている大原則という感じなのだろうなあ。文化がそうなんですね。ぼくには魅力的に写りました。

権威を恐れないイスラエル人たちの行動哲学は、子供の時に家庭で育まれる。たとえばシュフタン教授は2人の娘に対し、「君たちは私が父親だからといって、私を尊敬する必要はない。私の振る舞いを見て、『パパは尊敬するに値する人物だ』と思えれば尊敬すればよい」と教えた。そして「常識を鵜吞みにしてはいけない。あらゆることについて疑問を抱き、質問をしなさい。失敗を恐れてはならない。失敗することは学ぶことであり、むしろ喜ぶべきことだ。ただし同じ失敗を犯してはならない。犯すとしたら、違う失敗を犯すべきだ」と娘たちに説いた。

めちゃいいな。ぼくも後輩たちに「尊敬するに値する人物だと思えば尊敬すればよい」というスタンスで接していきたい。

ところで移民国家である米国とイスラエルが、世界有数の起業大国であることは、偶然ではない。移民は、全く新しい環境でゼロから存在基盤を築き上げるので、自分の能力を信じるしかない。常に前向きに考え、楽観的でなくては、住み慣れた環境を捨てて新しい生活にチャレンジすることはできない。このため、移民国家イスラエルには、元々チャレンジ精神が旺盛な人々が多い。

移民国家、なるほどねぇ。筋が通った主張には見えるけれど、それを裏付けるデータとかあるのかしら。

私は、約2000年にわたり歴史の荒波にもまれた経験に基づく楽観主義と不屈の精神、型破りの発想を促す教育法、横柄なまでに権威を恐れない態度、移民国家のダイナミズム、そして失敗を恥と考えずに繰り返しチャレンジする精神も、この小国が世界有数のイノベーション大国になった重要な理由だと考えている。

著者はこう考えている、ってことですね。それならわかります。

その他のメモ

  • ヨーロッパでいうとドイツとの関係が深い
  • 最近は中国もすごい勢いでイスラエル企業に投資しているし、イスラエルは中国の巨大な市場に乗り出そうとしている
  • 日本は、アメリカやドイツや中国と比べると、イスラエルへの進出が遅れている

このへんは、本書を手に取ったときのぼくが直接的に「知りたい」と思っていたトピックではなかったけれど、戦争や政治の話も含めてあれこれと網羅的に概要を知れたのはお得だったな〜と思います。

イスラエルがすごい―マネーを呼ぶイノベーション大国― - Amazon.co.jp

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