#june29jp

「Me2.0」を読んだ

2010-05-02

日経BP社の矢崎茂明さんからご献本いただきました!大変光栄です!

ME2.0 ネットであなたも仕事も変わる「自分ブランド術」

ME2.0 ネットであなたも仕事も変わる「自分ブランド術」

同封されていたお手紙がかわいかった!矢崎さんかわいい!「via 宅急便」かわいい!

献本

300ページほどを一気読みして感じたことを書きます。

概要

本書の副題にも「自分ブランド術」という言葉が出てくるように、個をブランド化する意味、ブランド化する方法、ブランド化したときに得られるものについて書かれた本である。これまで、企業が自社製品の販促のために活用してきた種々の手法を、個人が自分を売り込む場合に応用し、自分ブランドを「見つける」「つくる」「伝える」「管理する」という4つのステップに整理して説明している。

書かれていることの背景には「欧米文化」があると感じていて、P.326ページからの「訳者あとがき」においても「米国的な価値観」という表現で言及されていた。日本人のボクらが読む場合、その分は差し引いて考えるべきだろう。Facebook や LinkedIn の例にみるような、実名登録を基本とし、オンライン履歴書と人脈発掘の場として SNS (Social Networking Service、Social Networking Site) を活用する文化は、日本ではいまいち浸透していないように思える。

とはいえ、ブログや Twitter を取っ掛かりにしたリクルーティングの例は、ここ日本でも少なからず散見され、2010年の今、特別に珍しいことではない。いくつか実例を挙げてリンクを張ろうかと思ったが、数年前の出来事だったりしたのでやめておいた。つまりはそういうことで、もう変化は「起こった」ことだ。

パーソナルブランディングの「成功」とは

本書の言う「成功」は、ひとつの究極形である。

パーソナルブランディングの観点からいえば、成功とは「自分が心から楽しめることをして収入を得ること」だ。

自分ブランドをポジショニングする (P.171)

ボクも、過去にこのブログのエントリ「高専カンファレンス2008 Winter in 東京」に参加してきた (自分編)で「自己ブランディング」に対する考え方を示した。しかし、本書の指す成功が「山の頂」だとすれば、ボクが指していたものは「山の3合目」といったところだ。

確かに、好きなことを仕事にしてゴハンを食べていこうと思えば、本書に書かれているように「独自ドメインを取得して、そこでブログを書き、SEO までしっかりやろう」等を意識的に戦略的に実践しても大袈裟ではないだろう。一方、ボクはもう少しお気軽なものを扱いたくて、例えば「自分の好きなものについてブログに書いたり Twitter につぶやいたりする」ぐらいでよくて、その結果、同じ趣味を持った人と出会えたら十分に嬉しいことだし、ブランディングが成功したと言ってよいと考えている。Web をエコーチェンバー(自分共鳴装置)として活用するってことだ。これならすぐにでも始められるし、ガンバって始めようと思わなくてもそれを実践してしまっている人はたくさんいる。

そんなふうに、学校の教室で気の合う友達を見つけるくらいの感覚で自己ブランディングを進めていく人々がいる、そういった時代を生きている、ってことに気が付くのがとても大事なことだ。本書にも「個人名刺は作った方がいいよ」とアドバイスが書いてあるが、そんなことは、ボクが参加するカンファレンスや勉強会で出会った若い子たちは、誰に言われるでもなく感覚として理解している。

逆に、発見したこと

自己ブランディングのために「イベントを開催しよう」「その写真を Flickr に写真を載せよう」「使用された資料は SlideShare で共有しよう」なんてアドバイスも、息を吸うように体現できている。思えば、このブログを開設しようと考えて下準備していた2006年の春頃、あの頃からボクの自己ブランディングは本格的な歩みを始めたのであろう。「○○さんのブログに憧れて、ボクも始めてみました」自分の手本になってくれそうなブログを3つ見つけて、挨拶のメールを送ったのだった。それから今日まで、身近なところに「この人の、こういう部分に憧れる」を見つけては目標を設定し、そこに近付くために動いていたら、今の自分になった。

前進の過程で「Web を活用する」のは、ボクにとっては、とても自然なことだった。少し前に同じ年のお友だちと話したとき「大学生と話していると、目標となる大人がいないって嘆いている」と聞いた。Web エンジニアの道を行くボクにしてみれば、目標となる人は Web 上でたくさん見つけられる。また、ボクが会う学生の子たちにもこれは当てはまらない。技術者の卵である彼ら彼女らには、勉強会等のイベントが、将来を考える上で重要な役割を担っており、嘆かなくても済む状況を生み出している。

だとすれば、だ。ボクが本書から学び取るべきことは「自分や、自分のまわりの人たちが、自然に体現できていることは『実は』新しい時代の生き方なんだ」ということである。「実践しよう!」と書かれていることのほとんどはすでに実践済みであった。では、その効果はいかほどであろうか。ひとつ、効果の例を挙げるとすれば「この本を献本していただけたこと」である。矢崎さんは、2007年にボクがとあるコンペティションに出場したときにお世話になった人で、それ以来、ボクの活動を支援してくれている。その矢崎さんがこの本を送ってくださったのは、ボクが、矢崎さんにも見えるように活動を続けてきたからに他ならない。矢崎さんに、大和田純の生き方(ブランド)がいくらか伝わり、この本に触れることに意味があると思っていただけたのだろう。そう理解している。

移動中

矢崎さんと遊んだ日

また、自分にとっての「自然で普通な生き方」が、上の世代や分野の異なる世界で「新しい生き方」であるならば、その人たちとの「上手な接し方」は身につけておいて損はなさそうだ。

心に響いたメッセージ

もしかしたら、自分は本書の対象読者像から少し外れるのかもしれない。と感じたところで、それでも心に響いたメッセージはたくさんあったので、いくつかピックアップしてメモしておきたい。

こうした刺激的な変化の中から、新しいタイプの労働者が姿をあらわした。彼らはインターネットを、世界に興奮をもたらし自分にエネルギーと力を与えてくれるものと見なし、変化を起こしたくてうずうずしている。この自由で新しい世界を切り開いていくのは、自信と意欲にあふれ、新しいテクノロジーを使いこなす能力を持ち、強力な自分ブランドをつくることで自分を打ちだし、目標を達成しようとしている人々だ。

はじめに (P.8〜P.9)

当時の私は個人としても、ビジネスパーソンとしても、さまざまな疑問や社会的圧力を感じていた。自分は何者なのか、どんな服を着て、どんなふうに人と接すればいいのか、人生で何を成し遂げたいのか──こうした問いへの答えを私は何年も考えていた。ひとつのキャリアパスを選ぶのが怖かった。他のチャンスを失うような気がしたからだ。雇用市場にも不安を感じていた。私の人脈は貧弱で、資金もほとんどなかったので、思い切った行動をとることもできなかった。当時の私は、おそらくあなたとほとんど変わらなかっただろう。

挑戦し、その結果から学ぶ (P.139)

「これが私のブランドだ。私はブランドに燃えるような情熱を感じている。私の成功を邪魔できるものは何もない。あきらめることなんてありえない。途中で放り出せるほど、私の未来はさまつな問題ではないのだから」

Me2.0の成功者たち (P.299)

最初の一歩を踏み出すなら、今以上のときはない。

Me2.0の成功者たち (P.300)

これはあなたの人生だ。ならば助手席ではなく、運転席に座ろう。

今日から始めよう! (P.313)

余談

最後に、本書の内容から少し離れて、余談を加えておきます。

4月のはじめに、お友だちが「読んでいて君のことを思い出した」と言って渡してくれたのは、佐々木俊尚さんの著書ネットがあれば履歴書はいらないでした。この本と Me2.0、構成はとても似ていました。立て続けに2冊の本がボクのもとに「やってきた」のです。

どちらの本にも時代背景の描写があって、そこには「終身雇用制度は崩壊した」とか「大企業の看板を背負っていれば安心、という時代は終わった」とか、ボクの口からは絶対に出てこない内容がきちんと整理されていて助かります。あぁ、そうなんだなぁと思います。

ボクは、生きる上で、時代背景なんてまったくと言っていいほど考えていません。ただただ「しっくりくる」ものを選んでいるだけ。「今はこういう時代だから、こういうことをしておいた方がいいよ!」「就職に有利だからブログはちゃんと書いておいた方がいいよ!」なんて、口が裂けても言いません。みんなそれぞれ、自分に合った楽しい生き方を選んだらいいだけだと思っています。もしボクの生き方が楽しそうに見えるんだったら、お話できることはあるので、お話しましょう。

前の世代のことは分からないし、ガンバったとしてもせいぜい知識が身に付くくらいで感覚は得られないだろうと、ほとんどあきらめています。でも、感覚を持った人のお話を聞くのは好きなので、傾ける耳は持っています。

ちょうどこの本が手元に届いた頃、今後のキャリアのことを考えて悩んでいて。本の内容から直接、ってわけではないのだけれど、本の内容から拾い集めたキーワードについて考えていたら、悩みがひとつ解決に向かいました。だから個人的にお礼を言いたいです。矢崎さん、どうもありがとう。

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