#june29jp

書籍「フィンランド 豊かさのメソッド」を読んだ

2018-02-12

先月には書籍「未来型国家エストニアの挑戦」を読んだを書いており、世界のいろんなおもしろ文化に興味を持って調べている最中の june29 です。エストニアに続いてフィンランドですから、今は北欧の文化に惹かれているというのがばればれですね。エストニアは特に「電子化」の部分を知りたくて調べていました。フィンランドについて最も気になったトピックは「教育」です。

最初に、書籍の紹介文の一部を引用しましょう。

経済協力開発機構(OECD)による生徒の学力調査(PISA)で、フィンランドの子どもたちがトップの成績を挙げて以来、その教育のあり方に注目が集まっている。またフィンランドは、世界経済フォーラム(WEF)の国際競争力ランキングでも、何度も1位に輝くなど、経済的にも発展している。充実した福祉、女性の社会進出、透明性の高い税金の使途……日本とは対極的とも言える、その成長の秘密は、どこにあるのだろうか。現地の大学院留学など、フィンランドで過ごした貴重な体験をもとに語る、“不思議で豊かな国”の素顔。

これを読むだけでわくわくしちゃって、勢いまかせに Kindle 版をポチッとしちゃいました。

フィンランドの人口は 2012 年のデータで約 532 万人。2017 年 3 月のデータで北海道の人口が約 534 万人ですから、ほとんど北海道民の数と同じと言ってよさそうですね。フィンランドの国土面積は、日本から九州を引いたくらいだそうで。このことから、人口密度は日本よりもずいぶん低いことがわかるでしょう。

せっかくなので日本語版 Wikipedia のフィンランドのページからも引用します。

人口や経済規模は小さいが、一人当たりGDPなどを見ると豊かで自由な民主主義国として知られている。フィンランドはOECDレビューにおいて「世界で最も競争的であり、かつ市民は人生に満足している国の一つである」と2014年には報告された。フィンランドは収入、雇用と所得、住居、ワークライフバランス、保健状態、教育と技能、社会的結びつき、市民契約、環境の質、個人の安全、主観的幸福の各評価において、すべての点でOECD加盟国平均を上回っている。

そんな国の文化から、ぼくが学べることはなんだろうか。ぼくが日々に活かせることはなんだろうか。そういう気持ちで読みました。

ちなみにこの書籍は 2008 年に出版されたものなので、2018 年に読むとしたら「執筆から 10 年ほど経過している」という事実は頭に入れておくとよいでしょう。

読書メモ

まずは雑多なメモを箇条書きで。

  • 「サウナ」はフィンランド発祥で、フィンランド語の Sauna がそのまま日本でも定着している
  • まず残業をしないし、夏には4週間の休暇をとるのが当たり前
  • フィンランド人の当人たちは「国際競争力1位、そうなんですね〜」という感じらしい
    • 失業率が高いということがあり、その影響で「景気がよい」とは感じにくいのだそう
  • 「新卒」という雇用の枠組みがなく、就職活動はけっこう大変
  • 「効率のよさ」を重視する傾向が強く、日本人からすると「ちょっと冷たいのでは?」と感じる面があるとのこと
  • フィンランド語には、日本の敬語のような複雑なシステムがない
    • 厳密には存在するが、目上の人もそれを使われることを好まず、だんだんと使われなくなってきている
    • 肩書きや敬称ではなく、下の名前でフランクに呼ばれることを求める場合が多い

ここからは、そもそものお目当てであった「教育」関連のトピックを、引用を交えながら。

フィンランドでは、教師は伝統的に人気の高い職業だ。もちろん安定性や長い夏休み、といった魅力もあるが、給料は仕事の大変さ、責任の重さに比べれば、けっして高いとはいえない。しかし、フィンランドに「教師は国民のろうそく、暗闇に明かりを照らし人々を導いていく」という言葉があるように、国民から尊敬されてきた職業なのだ。

なるほど、教師は人気、と。

とはいっても、「小学校のときに教わったあの先生に憧れて教師になりたい」と思っている人は、私の周りにはほんのわずかしかいなかった。逆に教職を目指す友人からはよく、今までに教わった変わった先生や、嫌いだった先生についての批判を耳にした。彼らが教職を目指すのは「恩師への憧れ」というよりも、それまでなんらかの形で「教える」経験をしてきており、その教えることの楽しみ、子どもたちへの愛、そして自分の知識を他の人にも伝えたいという願い、というのが大きい。そして「知識を教える」ことだけにとどまらず、広い意味で「教え育む教育」ということに情熱をもち、教師に憧れている人がとても多い。これが、専門性と人間性両方を兼ね備えた教師の質につながっていくのだろう。

じゃあどうして、そんなふうに熱を持って教育に関わりたくなる人が多いのだろう。教えることに関して成功体験を得やすい環境が整っているのだろうか。

そして教師の質とともに大事なのは、カリキュラムや教え方である。以前、ある教育大臣を務めた人物がこう言っていた。 「教育で大切なことは情報を与えることだけではない。自分で考える力、問題解決能力、想像力、理解力、適応力を養うことである」

これはいいですね。国も教育に携わる人たちも「教育とはなんなのか」をしっかりと言語化して、行動の軸に添えている印象を受けました。

フィンランドの試験には、日本でよくある穴埋め式や選択式というのはなく、基本的には論述式である。例えば歴史の問題であれば、「フランス革命について述べよ」といった問いで、解答には、年号だけではなく、革命が起きた背景、実際に誰が何をし、どうなったのかなど、かなり幅広い知識と論旨の流れが求められる。

丸暗記では太刀打ちできないタイプの問題ですねぇ。総合力が問われるタイプ。

ぼくがこの本を読んでいたころに日本では、大学入試センター試験で「ムーミンの舞台がフィンランドであるかどうか」を問う問題が出題され「そもそもこんな知識が大学に入るのに必要なのか」という声が飛び交っていたというのはなかなかおもしろいな、と思ってしまいました。他人事だ。

しかしこれだけ教育に力を入れている国であっても、受験戦争といった競争もプレッシャーも学校や家庭にない。むしろのんびりとした、おおらかな空気が漂っている。それは中学での選択が一生を決めてしまうということではなく、回り道をしても、迷いながらも、いくらでもやり直しがきく社会や環境があるおかげであろう。

ぼく個人は、いわゆる「受験戦争」ってやつを経験せずに大人になったので、アレのよしあしについて具体的に語れることはほとんどないのだけれど。それでも、原子爆弾を落とされて戦争に負けて「もう戦争はしない」と宣言している国において、若者たちを争わせる仕組みに「受験戦争」と呼び名を与える価値観は控えめにいっても異常だとは思いますね。話が逸れました。

世界的に見ると、どうなのでしょうか。もっとフィンランドの教育の雰囲気を見習った方がいいのか。それともフィンランドが例外なだけで、やっぱり煽るようにして勉強させた方がよい結果につながるケースが多いのか。このあたりはよく知らないので、今後また調べていきたいです。

さて続いては、養豚や農業で生計を立てていたとある農家一家のエピソードから。様々な事情によって養豚を続けられなくなった一家の、定時制高校で学ぶ 40 歳の奥さんのお話が紹介されている。

数年前、一家から養豚をやめると聞いたときは「この一家、路頭に迷ってしまうのでは……。子どもだってまだ小さいのに」と私はかなり心配したのだが、当の本人たちはあっけらかんとしたものだった。「大丈夫、なんとかなるし、また勉強して新しい仕事を探せばいいから」と笑って言っていた。そして、二人とも勉強という選択肢を選び、着実に新しい道を切り開いていっている。この一家をみていると、勉強や転職には年齢はあまり関係ないんだな、とつくづく感じさせられる。

フィンランドでは、生涯を通じて「学び続ける」という習慣があるようです。まぁ「大変だ」と思わないわけではないものの、ぼくは「いいなあ」と強く思います。いやなのは「特定の、学ぶべき時期」が規定されていて、その時期にうまく学べなかったらもう手遅れ、みたいなルールなので。いくつになっても学べる、それでなんとかなっちゃう、という楽観的な雰囲気はポジティブな行動を誘発するだろうと想像します。

教育は何も親のためや強制されるものではなく、自分の身を守るための、そして能力を高めるための切り札であり、努力したぶん、いずれ自分にプラスになって返ってくるという意識がこの国にはある。

なるほどな〜。制度やらカリキュラムやら云々って話ももちろんあると思いつつ、この意識を浸透させられていることが何よりの武器なのだ、と思ってすっかり納得してしまいました。

まとめ

2008 年に出版された書籍「フィンランド 豊かさのメソッド」を読みました。ぼくが興味を持っている「フィンランドの教育」について、多くのことを知れました。またそれだけではなく、フィンランドの文化を形成する様々な景色も見ることができました。とってもおもしろかったです!

教育系の事業に関わる人にとっては、フィンランドの事例ってよく知られているのかしら。「こういうのもあるよ、おすすめだよ」という情報があればぜひ教えてください。

フィンランド 豊かさのメソッド (集英社新書)

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