#june29jp

書籍「クリエイティブ都市論」を読みました

2019-09-24

クリエイティブ都市論を読んだので、読書メモを書きます。

この書籍は原著が 2008 年、日本語版は 2009 年の出版なので、もう 10 年以上前に書かれた内容ということになります。実はぼくは 2010 年 12 月 に紙の本を買っていて、たしか @snoozer05 さんに教えてもらって知ったのだったと思います。

ただ残念なことに、当時は読んでもあまりピンときませんでした。上京から 2 年と少ししか経っていないころの自分は「とにかく東京でがんばる」くらいのことしか考えていませんでしたし、それもそのはずと言えましょう。

あれから 9 年ほどが経過し、東京での生活も 10 年を過ぎ、北海道で3週間ほど過ごした2019年の夏を経験した今の自分であれば。そう思ってあらためて Kindle 版を購入し、居住地の選択に関するヒントを求めて冒頭から読み直してみました。

読書メモ

本書を読了する頃には、今日のグローバル経済において、居住地がどれほど重要な役割を担っているかが理解できるはずだ。また自分にふさわしい居住地を選び、幸福で充足感に満ちた人生を極限まで引き出すにはどうすればよいか、有効な知識が得られるだろう。

── 第 1 章「住む場所の選択」より

わくわくさせてくれる文章が第 1 章にあるのはうれしい。

そして、イノベーションの源泉となるのは企業ではなく都市である。

── 第 4 章「集積の力」より

ちゃんと考えたことはなかったけれど、そうかもな〜と思いました。スタートアップ企業があって、投資家がいて、新しいものを好む利用者がいて、そういった環境があるからその中から成功する企業が生まれる、みたいなイメージ。

しかしサンタフェの研究チームにとって予想外だったのは、イノベーションや特許活動、クリエイティブな人々の数、賃金、GDPなど、生物学との類似性が少ない特性と人口増加との相関においては、べき指数が一より「大きかった」ことだ。要するに人口が二倍になると、クリエイティブな生産活動および経済生産が二倍より大きくなるのである。生物有機体は大きくなるとすべての活動が鈍化する。これに対して、都市は大きくなればなるほど繁栄し、クリエイティブになる。この現象は「超線形」(べき指数が一より大きい)と呼ばれるが、「ほぼすべての測定において、都市の人口が増えると一人当たりのイノベーションや財産は増加する」という。このような加速は集積力がもたらすものだ。すなわち才能ある人々が寄り集まることは、生産性向上の面で重要な一要素なのである。

── 第 4 章「集積の力」より

こういった特性が、本書が呼ぶところの「メガ地域」を生むのだなあ。

こうして今日では人種、教育、職業、収入と並んで、場所が持てる者と持たざる者を分かつ要因に加わった。過去は、生まれた場所によってその者の身分がほぼ決定づけられた。今日の社会は流動性が高く、移動する能力の有無によって人生の可能性が大きく左右される。

── 第 5 章「移動組と定着組」より

日本を飛び出して活躍している友人たちの顔を思い浮かべた。たしかに彼ら彼女らの人生の可能性は、ぼくよりも広がっているだろうと感じられる。ぼくからは見えない努力や苦労もたくさんあるだろうけれども。

かつてIBMの社員たちは冗談で、「わが社の社名の由来は『I’ve Been Moved(私は異動になった)』の頭文字だ」と言っていたほどだ。

── 第 5 章「移動組と定着組」より

この IBM ダジャレはちょっとおもしろかった。

しかし今日、移動組と定着組の微妙なバランスは崩れつつあるようだ。集積することによるメリットが増大し、世界がスパイキーになればなるほど、移動組に加わらなくてはと考える人が増える傾向にある。だからといって永遠に世界を放浪し続ける必要はない。私が言いたいのは、私たちが本来の能力を発揮して幸福を見出すには、場所の重要性を認識し、選択肢を正しく比較検討して、必要とあれば移動する覚悟を持つべきだ、ということなのである。

── 第 5 章「移動組と定着組」より

そうですね、ぼくも今年はそんなことを感じて、この本を手に取ったのでした。

クリエイティブな職業ではその実行において、物資(たとえば鉄鉱石や石炭などの原材料)をほとんど必要とせず、規模の経済も発生しない。芸術家の活動は個人生産の最たるものだ。芸術家は制作プロセスに多くの人員を割くことなく、個性的で非凡な作品を作り上げる。では、その創造の現場(シーン)には何があるのだろうか。

── 第 7 章「ジョブ・シフト」より

一昔前は「たくさんの人を集めて、たくさんの工場を稼動させる」ことで生産を伸ばしていた、と労働集約が強かった時代に関する記述がありました。でも今はそればかりではない、と。そうなってくると同じ場所にたくさんの人が集まることで生じるプラスの作用とはなんなのか?気になるところでした。

創造の現場の大きな特徴は、そこで得られる「自分が他者を眺め、自分も他者から見られる」機会のなかにあると彼らは指摘する。それは「仕事という意識からはずれた、完全にエンターテインメントな文化」なのだ。「独特の環境や才能の集積によって、ある種の価値観や趣味の共有が促され、人間関係が構築され、正しい作法のあり方が決まる」。こうした実態のなかにこそ手掛かりはあると彼らは説く。創造の現場は、職業がいまも集積し続ける理由を見極めるうえで、有効な視点を私たちに与えてくれる。

── 第 7 章「ジョブ・シフト」より

これは「オンラインのコミュニティで代替可能なのか?」というのが最も気になったところかな〜。他の職種ではどうなのかわからないけれど、ソフトウェア・エンジニアであれば物理的に近くにいなくても獲得できる性質であるような気はしています。

調査結果は、居住地が幸福感にとって非常に重要であることを示すものであった。人間関係や仕事と同様に、居住地は私たちの幸福に大きく作用していた。幸福との関係性を一から五までの五段階で評価したところ、居住地の評価値は三・六三で、私生活(四・〇八)と仕事(三・九八)に次いでおり、経済状態(三・四六)よりも上位にランクされた。

── 第 9 章「輝ける幸せな場所」より

経済状態よりも上位っていうのはなかなかすごいな〜。やっぱり居住地についてあらためて真剣に考えてみることにしてよかったな、と思います。

居住地が提供してくれる環境に私たちは適応し、それを自分のものとすることができる。今日の流動的な社会のメリットは、私たちが地理的なバックグラウンド、すなわち家族や宗教、その土地に代々伝わる規範や慣習にいつまでも縛られなくてすむという点にある。私たちは自発的な選択によって、仕事やライフスタイル、個人的な興味、さまざまな活動など、自分たちにとって重要なことを基にアイデンティティを再構築することができる。無意識にかもしれないが、私たちは自らの可能性をつかみ取るために、自分の心理的要求を満たす場所を探しているのだ。

── 第 9 章「輝ける幸せな場所」より

そういう時代に生まれてよかった。生まれた地域の考え方が自分の価値観と合わなくて、でもそこで一生を過ごすなんてことになったらしんどそうだもんな。あるいは、情報が民主化されていない時代であれば「この土地とは合わない」ということ自体に気付けないのかもしれないけれど。

ここで重要なのは、地域にも人間のような性格がはっきりと存在することである。自分と正反対のものが魅力的に見えたり、意外な組み合わせが成功に結びついたりすることも多々あるが、多くの人がより幸福感と満足感を得られるのは、やはり各自の性格に合った地域で暮らすことだ。レントフローが作成したデータには、幸福感や幸せな暮らしについての質問事項も含まれていたので、私たちは人間の性格、場所、幸福の相関を検証することができた。はたして自分と同じ性格の人が高度に集中する場所のほうが、より幸せを感じるものだろうか。答えは間違いなく「イエス」である。

── 第 11 章「都市の性格心理学」より

原著のタイトルは「Who’s Your City?」なんですよね。都市を擬人化している。日本語版だとそのニュアンスが落ちているので、第 11 章まで読み進めてようやく「地域の性格」という、言ってみれば「地格」のような概念に思い切り触れることになります。

さて、地域の経済状況において確たる役割を果たしている性格因子は、経験への開放性のみである。この因子はコンピュータや科学技術に関連した雇用数、地域の人的資本水準、ハイテク産業、所得、住宅価格との間に強い相関が見られる。

── 第 11 章「都市の性格心理学」より

心理学分野で「ビッグファイブ」と呼ばれる、次に示す 5 つの性格因子があるのだそうで。

  • 外向性
  • 調和性
  • 誠実性
  • 神経症的傾向
  • 経験への開放性

少なくとも調査を行った時点においては「経験への開放性」ってやつが、その地域の経済を活性化させる要因になるのだそうです。時代が違えば「誠実性」がもっと重宝されたりするのかしら?と思ったりもしつつ、資本主義的でイノベーションを大事にする時代の風潮を考えてみると、変化に強い開放性が役に立つのかもしれないな、とは思いました。ぼくもこの 5 つの因子の中から選ぶとすれば「経験への開放性」が高い地域に住みたいような気がします。少なくとも「調和性」「誠実性」「神経症的傾向」に思い切り重きを置く風潮があったら肌に合わなそうと想像しています。

移動手段が充実しているかどうかは、個人の日常的な幸福感を決める重要な要素でもある。幸福論を専門とする心理学者によれば、場所に関連したストレスの二大要因は長距離通勤と交通渋滞である。ノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマンらが、人々の日常的行動に関する詳細な記録を基に研究を行ったところ、人が一日のなかで最も苦痛を感じる行為は通勤であることが判明した(当然のことながら、最も楽しい行為にランクされたのは「親密な人といること」である)。

── 第 12 章「最高の居住地を見つける方法」より

通勤な〜。今のぼくの状況で考えると、通勤をなくす方法は「居住地を上手に選ぶ」だけじゃなくて「出勤せずに働けるお仕事を選ぶ」というのもあるので、恵まれているよな〜と思いました。

感じたこと・考えたこと

  • 北米の具体的な地名を挙げながら説明してくれるところ、北米の土地勘がある人にとってはすごくわかりやすいのかもしれないけれど、ぼくにはピンとこない話が多かったので、これの日本版があったらもっと楽しめるんだろうな〜と思った
    • 訳者あとがきにて「アメリカの具体的な都市の話だったので、原著の第 12 章から第 15 章までを省略した」と書かれていて、そうしてもらえて助かりました!と感謝した
  • 第 12 章「最高の居住地を見つける方法」には「まず、これを考えてみよう」「次にこれをやってみよう」と具体的な行動のアドバイスが書かれていて、自分が新しい居住地を選ぶときには参考にしたいと思えた
  • 読み終わってみてのいちばんの気持ちは「どこに住むのがいいかわからなくなった!」で、これはぼくが真面目に地域について考え始めることができたという証なのだと思う
    • 生まれ育った北海道に 24 歳までいて、それから東京に出てきて 10 年ちょっとを過ごして、それ以外の地域のことをぜんぜん知らずに生きてきてしまったのだ
    • これから旅行に行ってみたり、短期滞在してみたりしながら、いろんな地域のことを見てまわりたい気持ち

まとめ

書籍「クリエイティブ都市論」を読んだので、読書メモを書きました。これからぼくはどんな場所を自分たちの居住地に選ぶのでしょうか。人生において、いちばん居住地についてよく考えている最近です。なんといっても、楽しくて充実した毎日を過ごしたいですからね。

読んでみた結果「いろいろと知って、いろいろと考えなきゃダメじゃん」となったので、自分にとってのよい居住地を見つけられるよう、そういった目線を持ってあちこちを見てまわりたいと思います。

クリエイティブ都市論

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