はじめに
今年 2018 年も、ほとんど毎日をウェブとともに過ごし、ウェブについて様々な想いを巡らせた年でした。ぼくの個人サイトであるここ june29.jp も、いちおうは「ブログ」という体裁で運用しています。ブログブームだなんて言われていた時代はずいぶんと遠く、ブログという概念はそれなりに社会に定着したように思えて、それがウェブログの略語であることはどれほどの人に意識されているのだろうかと、ふと考えてみたりもしました。
このエントリは 2018 Advent Calendar 2018 の参加エントリです。個別の記事のことをエントリと呼んじゃうあたりがウェブログっぽい、と自分では思っています。
かなしい気持ち
こんなことを書き始めちゃう自分がなにより悲しいのだけれど、2018 年はウェブを眺めていて悲しい気持ちになることが多かったように思います。楽しいことやうれしいことはこれまでと同じようにたくさんあったものの、悲しくなったりつらくなったりすることがだんだんと増えてきてしまいました。
さて、せっかく 2006 年 6 月 29 日からウェブログを続けてきたぼくなので、過去のぼくがウェブに対してどんなテンションだったかを見てみましょう。
たとえば 2008 年、今から約 10 年半前に書いた もっとWebにデータを! を読んでみると、テンションが若い感じがしてちょっと恥ずかしかったりもするんですがそれは置いておいて、当時のぼくは「もっと多くの人が、もっと多くの種類のデータを、どんどんウェブに記録しようよ!」というテンションでいたようです。たしかにそんなテンションだった気はします。記録がなかったら思い出せなかったでしょうから、記録は便利ですねぇ。
そいで、今年のぼくはどんなテンションだったかというと先述の通りで、具体的には「なんでそんなことをわざわざ言うんだ、わざわざ書くんだ」「不毛な争いは終わりにしましょ〜」と思うことが毎週のようにありました。ちょいと疲れ気味なときなんかは「人間がたくさん集まるとロクなことにならんね…」「こういう隙だらけな迂闊な発言をしちゃう人は、ウェブで発信しない方がいいと思う、トラブルにしかならんよ」と思うこともありました。
こんなぼくを 10 年前のぼくが見たら、きっとすごく悲しい気持ちになると思います。なんか、ごめんね。
観測範囲の話
「そういう感想を持っちゃうのは、お前がそういうものを見ているからだろ」というのは、その通りだと思います。
今年の夏くらいに「あー、気落ちするとわかっていながらそういう情報を見に行ってしまっているな」と明確に自覚した瞬間があって、一度、自分が日常的に活用している情報チャンネルの整理をしたり、情報収集のやり方を変えたりしました。それでいくらかマシになった部分もあるのですが、まだまだ毒を吸ってしまうタイミングがあるので難しいところです。
基本的に、情報チャンネルはホワイトリスト方式で運用しています。Twitter でいうと「この人たちからは毒素の強い情報は流れてこない」と安心できる人たちのリストがいくつかあって、それらのみを見るようにしています。
「この人の発言は見ない」としてブラックリストを育てる方式もありますが、ぼくにとっては「ブラックリストをメンテナンスしている」こと自体が精神衛生上うれしくないことなので、人生において一切のブラックリストを保持せずに済むようにがんばって暮らしています。
傷ついたって認めてもいい、傷つきたくないって主張してもいい
友人である @hmsk くんのエッセイに 「傷つくなぁ。」 という話があって、これにはハッとさせられたんですよね。ぼくも彼と同じようなことを思いました。
ウェブで発信していくにあたって「ひどいことを言ってくる人がいるのは仕方ない」「無視するのが得策ですよ」「気にしたら負けです」といったアドバイスというか心構えというか、そういうのがあるのは知っています。けど、あらためて考えてみて「ウェブだからしょうがない」と認めてしまうのはよくないのかもな、と考え始めました。ウェブを利用している全員と心からわかりあえるだなんて思っていませんが、だからと言って傷つけ合うのもオッケーとはなりません。わかりあえない相手がいても、互いを尊重しあえるウェブがあっていいじゃないか。ぼくはそういうウェブをあきらめきれないんだな、と思えたのも 2018 年です。
「ウェブは傷つけられる場所なので我慢しましょう」なんて、そんな紹介文は書きたくないもんなあ。
ウェブの父は、なにを思う?
@sot528 さんが書いていた Decentralizationについて語る時に僕の語ること | ALIS をふむふむ〜と読んで、そこからリンクをたどり、ウェブをつくった Tim Berners-Lee さんの最近の問題意識について知りました。
ぼくは「Web 2.0」というフレーズがバズワード化していた頃にウェブに夢中になっていったクチで、ここ june29.jp だってその頃に立ち上げたものだし、あれから 10 年以上を経て「ウェブには次のメジャーバージョンアップが必要かもしれない」という機運が高まっているのだから気にせずにはいられません。いったい「Web 3.0」はどんな姿形をしているのでしょうか。これを考えるのはとても楽しいです。
それでもぼくらは発信していきたい
10 月には 日本人ITエンジニアの90%に記事を書いてほしくない という記事が話題になりました。言わんとしていることはわかるけれど、ぼく個人は「書くな」「書くべきではない」という主張には明確に反対です。「プロリーグで活躍できる実力がある人だけサッカーをやるべき」みたいなお話として捉えました。それだと後進が育たないので、サッカー少年たちも楽しくプレイできる場があった方がいいとぼくは考えます。技術記事のライティングも同じ。書きながら読まれながら上達していくのが効率的なので、安心してそれができる環境があった方が結果的に質の高い記事がたくさん生まれることになると思います。
問題は「マッチング」ですよね。プロの試合を観にきた熱烈なサッカーファンに少年サッカーを見せたら満足してもらえないのは仕方ないと思います。ウェブの歴史をふりかえると、Google のおかげで欲しい情報が見つかるようになったとよろこばれた時代がありました。ぼくらは Google の次を求めているのかもしれません。もちろん、Google の検索エンジンが進化してぼくらが満たされるという展開もあり得るでしょう。
いずれにせよ、情報を発信する人がいなくなれば情報が無になって検索も探索も意味をなさなくなってしまうので、発信を咎めるのには反対です。発信された情報を必要な人とマッチングさせるところをがんばっていきたい考えです。そこを上手くやれるプレイヤーがいたら、次の 10 年の覇者になるのかもな〜とも思います。
おわりに
今年見た中で印象に残っているウェブページたちへのリンクを絡めながら、ちょっと意識して「ウェブログ」っぽい調子で書いてみました。ぼくはやっぱりウェブやブログが好きなんだ、ということをたしかめながら。ウェブとブログがある惑星に生まれてよかった。そして平成も過ぎゆく。
2018 Advent Calendar 2018 の 22 日を担当しました。きのうは @o_ti さんの ベストオブ2018 - dskd でした。明日の担当は @tyore さんです。